「…っ無理」
目を閉じて、包丁で腕を切り落とそうとしたが、骨が固くて切れない。
「じゃあ、肉だけ削ぎ落として」
友人が抑揚のない声で言ってくる。これは材料だ、これは材料だ…人間じゃない。そう思い込まないと、まるで自分が殺人を犯している気持ちになる。
ぐにぐにと、気持ち悪い皮膚。ガタガタ震えて止まらない。これを削ぐ…相手痛くないかなとか意味不明な事をずっと考えてしまう。意を決して力を込めると、大量の血が出てきた。尚も肉を骨だけ残して削ぎ取っていく。
「これで、お前も死体遺棄の共犯な。警察に俺が自主しても、お前もなんらかの罪はあるだろう」
共犯…それを聞くと冷静な気持ちになれた。さっきまで一方的に脅される弱者の立場だったけど、対等になったような。
「俺は一切食べないから。お前が食べろ」
「分かった。約束する」
「大腸とか、脳みそとかどうするんだ?」
「そこは、俺食べれないから近所の野良犬にでもあげるよ」
本当に頭が弱いと思う。舌打ちしてしまう…
切り取った腕の肉は、野菜と共にウスターソースとペッパーと一緒に炒めた。死体の腕にはタオルを被せた。あんなグロいの、長い間見たくない。
「…出来たよ」
友人に渡すと、躊躇いなく食べた。
「…ちょっと固いな。でも不味くないよ。普通に美味しい」
これからどうしようか、悩んだ。これは続ける訳にはいかない。アパートの男子全員殺すなんて不可能だって事を、この頭の悪い友人にどうやって説明しようか…
次回最後です
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話