もう転職しましたが、某メーカーの企業向けコピー機の事業部に居た頃の話です。
業務用のコピー機は、FAX・プリンタ・スキャナーとの一体型が昔より増え、PCのようにHDDを内蔵しているものが数年前から普通になっています。
このHDDが何に使われているかというと、主にFAX受信した時に保存して紙へ出さずにPCから見たり、合成印刷などする時にコピー機上で画像編集したりするためですが、実は、過去にコピー・印刷した履歴を保存しておく事もしています。
つまり、その機械で過去に何をコピー・印刷などしたかというのが、HDDを見れば判るようになっています。
当時、私が事業部内で所属していたのが保守部門だったため、サポート契約をしているユーザ先で使っていたコピー機が、定期保守として社に送られてきました。
もし動作障害などがあった場合は、そのコピー機のHDDに残った履歴をチェックし、過去にどういう人が使っていて(大抵はカードとパスワードで認証しています)、いつ頃から動作に異常が出てきたかを調べ、解析作業の手掛かりにします。
こういうのもなんですが、大企業でもやはり一部には変な人もいるようで、普通じゃないものをコピーする方が稀にいます。
例えば、紙幣(読み取った時点でロックが掛かり、機器自体が使えなくなります)や、雑誌のグラビア、それからなぜか自分の手(好奇心?)などです。
ある日、いつものように正常に動かなくなったコピー機がうちにまわって来ましてた。その機種を専門に扱っていて、タイミング良く手が空いていたので、私が調査と対応を担当する事になりました。
定石通りにHDDに残された履歴を調べていくと、ある特定の日の深夜以降から正常動作できなくなってしまったようで、エラー関係の動作を示す履歴がずっと続いていました。
その日に何が行われたかをまずチェック。
普段通り大量コピー・印刷されるのは21:00頃から激減し、たぶんこのあたりの時間帯から殆どの方がフロアから退出されたようです。
その後、何回か残業していたであろう方のコピー・印刷が続いて、0:00を過ぎたあたりまでは通常の書類が履歴に残っていました。動作も問題なかったようです。
そして午前二時、徹夜でもなければ普通は誰も居なくなっている時間に、コピーがされていました。
履歴でその内容を見ると…
顔面のいたる所から血が滲んで苦悶の表情を浮かべた男性の顔…
上級機種のしかもカラーコピーなので、リアルに写っていました。
顔色もドス黒く変色していました。
(なんだこれは?)
気味が悪いので上司に報告して、そのユーザ先に問い合わせを依頼したのですが、回答は「言っている事が判らない。機械を直してこちらに戻して貰えればそれで良い」という返事だったそうです。
コピー機の動かなくなった原因も、何らかの強い衝撃で基盤部品にひび割れが起きた事が要因というのも判明したので、それだけを交換した所、正常に動くようになりました。
他には特に問題もなさそうだし、これ以上引き留める理由もないので、事務的にケースや内部部品をクリーニングして作業完了、発送受付に連絡してユーザ先へ発送するようにしました。
個人的には事件性があるようにしか思えませんでしたが、特に証拠もないのでそれ以上は会社の一員としては追求はしていません。
ただ、影や光の凹凸などから判断するに、あれはどう見ても写真や印刷物などの平面をコピーしたものではなく、明らかに立体的な実物をコピーしていたと思います。
その会社は都心に今もある商社で、あの時間にあのコピー機で何が起きていたかを、もう知る術はないように思います。
退職後、好奇心でネットの検索を使って、その企業で過去に事件が起きていなかったかを調べてみたことがありますが、離職者がやけに多いとかそういう口コミがある程度でした。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話