※おそらく、これは厳密には怖い話ではありません。
当時、怖さと哀しみを同時に味わった実話です。
当時の私は中学2年生。
かれこれ20数年前のお話です。
私には中学入学当初からの親友がいました。
彼女の名前はE。
互いの家に行き来していたし、しょっちゅう他愛のない話で笑い合っていました。
Eのお母さんは専業主婦だったのか遊びに行くと、私たちの話に加わり、一緒によく笑ってたし、優しい味わいのお菓子や食事を出してくれてました。
しかし、2年生になるとクラスが変わり、行き来も少なくなっていきました。
ある夏休みの登校日。
暑さにぼうっとした頭で、廊下を眺めていた私の脳裏に、いきなり
『Eのお母さん』
『死んだ』
という巨大な文字が浮かびました。
不吉きわまりない言葉にうろたえ、私は普段寄り付きもしない職員室に駆け込み、Eの担任につかみ掛かる勢いで尋ねました。
「先生!Eのお母さん亡くなったんですか?!」
半狂乱な私を訳が分からないといった風情で、うちのクラス担任が宥めます。
引き離され、教室に戻りなさいと諭す担任の言葉に重なるように、Eの担任の言葉が耳に入ってきました。
「何で知ってるんだ…?たった今連絡貰ったばかりなのに………」
うちの担任は、Eと私が親友だと知っていたので、あらかじめ、危篤の知らせを受けてたのだろうと納得したようですが、もちろん、私は何も知りませんでした。
親友のお母さんが、命に関わる病気を抱えていたなんて………。
葬儀の日、Eのやつれきった表情は痛々しく、正直見たくありませんでした。
しかし、彼女は私に気づくと、微かに笑顔を浮かべ、こう尋ねたのです。
「あのね、M(私)の描いてくれた絵、お母さんの柩に入れてあげていい?」
それは、かつて絵の道に進みたいと打ち明けたせいで家族と大喧嘩になり、Eのお母さんに相談した際
『おばちゃんには、何も言えないけど…おばちゃんはMちゃんの絵、とっても好きよ。おばちゃん、実は塗り絵が大好きなのよね。Mちゃんが塗り絵作ってくれたら嬉しいな』
そういわれ、中学生の子供なりに懸命に描いた拙い絵に、綺麗な着色がされたものでした………。
涙がとまりませんでした。
自分の娘だけでなく、その親友にも、深い愛情を注いでくれた方だったんです。
初めて亡くしたものの大きさに気づきました。
もしかしたら、実の子のEより泣いていたかも知れません。
「あの子、なんで友達のお母さんが死んだからってあんなに泣くの?」
「偽善」
そんな陰口も叩かれました。
気になんてなりませんでした。
それは『親』という人たちの深い愛情を教えていただいた出来事でした。
Eとはその後学校も別れ、会うこともなくなりましたが、良い人と結婚し幸せでいると伝え聞きました。
私も今幸せと言えるでしょう。
人の想いの優しさ、ありがたさに気づける人間でありたいと思う今日この頃です。
駄文読んでいただきありがとうございました。
一切脚色していないので、判りづらかったら申し訳ありません。
怖い話投稿:ホラーテラー はにゃさん
作者怖話