カーテンで光を遮られた暗い部屋の内に一人の狙撃手がいた。
狙撃手は黒髪のオールバックにスーツ姿の、一見サラリーマンのような服装をしていた。
ここはとある廃ホテルの一室である。
彼はここで黙々と作業に勤しんでいた。
脇に置いていた狙撃銃を組み立て弾を装填する。
少しだけ開けている窓から銃口を突き出した。
スコープを覗き異常が無いことを確認する。
準備が整い狙撃手はスコープから目を離した。
スーツのポケットから煙草を一本とオイルライターを取り出す。
口に加え火を点ける。香り高い紫煙が揺らめいている。
狙撃手はそれを肺が満たされるまで吸い込み吐き出した。
暗い部屋に紫煙が充満していく。
二、三口吸った後に指で練り消した。
すると外で歓声が上がった。
狙撃手が外を覗くとそこには合衆国の大統領の姿があった。
狙撃手は慎重に標準を合わせ、風が止むのを待った。
彼の目は笑っていなかったが口元は大きく歪に歪んでいて、邪悪な、シニカルな笑みを浮かべていた。
そして、風が止んだ。
引き金を思いっきり引いた。
プスンッと静かに銃口が火を噴いた。
スコープの中に写っいた大統領の頭が弾け飛んだ 。
外の広場はすぐに叫び声と逃げ惑う人々に埋め尽くされた。
狙撃手は銃を分解しドアの近くに立て掛けてあったトランクに直した。
そして悠然とホテルから立ち去った。
この狙撃手の行方を知っている者は誰も居ない。
怖い話投稿:ホラーテラー 遥さんさん
作者怖話