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中編5
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トンネル

どうも

黒髪眼鏡の

妹曰く萌え系特攻隊長…

こと、景さんです

因みに眼鏡は黒縁です。

確か、10月の終わり頃

寒い日が結構続いてるにも関わらず

お馬鹿の田中君から「曰く付きの良い感じのトンネルに行こう」との誘いがあったんね

俺も最初はお前は馬鹿野郎かと頭を叩いてやった

中途半端な5月半ばに転校してきた京介も

わざわざ憑かれに行くもんだとしぶってた

俺等が霊感有りなことは

ある事件をきっかけに学校中に知れわたってたんで

賛成メンバーがどうしても連れていくといい歳して駄々をこね始め

…仕方なく二人折れて

高校生らしくチャリンコで行ってきたんよ

部活が終わって

6時を周りかけた時間帯

10月終わりだと暗さはもってこいな感じ

トンネルに行く途中に田中からどんな曰くがあるのか説明を聞いたんやけど…

興奮と怖さで早口になってなに言ってるのか全っ然やったけども…(苦笑)

後ろに乗ってる京介もガッツリ俺の服掴みながらぽかん顔

まぁ良くある話で、

夜中にそこを通ったやつが

「トンネルの中はなんでだか雨上がりのように湿ってて

いきなり後部席から女のすすり泣く声が聞こえた」とか

「深夜にバイクで通ったら男の子が壁の中に歩いていくのをみて、気付くと後ろから子供の笑い声が」

みたいなトンネル現状にありきたりなものやった

一旦トンネル近くのコンビニに自転車を止め

注意を促す

「いいかー、?

あ、俺の言うこと聞かんやつは憑かれても知らんからな」

『憑かれる』の言葉に

神妙になる

「俺がヤバいと思ったらすぐ引き上げるからな

あと、もしなんかあっても

騒がない

離れない

目合わせない

まぁ、…

生きるか死ぬかは運次第やね」

最後の言葉を言うと

京介は信じらんないと絶句

田中達は

「ぎゃーっ説得力有りすぎ怖い!!」と騒ぎだした

しばらくして

「よっしゃ行くべ!!!」

田中が両手をあげて気合いをいれる

京介はいまだ気乗りはしないらしい

まぁ、俺も同じなんだけど…

皆でトンネルを見据えた

もう周りは暗い

できれば煌々と光るコンビニから離れたくない…

「……言い出しっぺが、先頭に立つべきだよぉ」

見据えた先はぽっかり口をあけたトンネル

墨を溢したような暗闇

田中も足を踏み出すのを戸惑ってる

「そ、うだな…行こうか諸君

……戦争だ。」

…どこに行くねん

早足で歩き出した田中の後を追う2人

それを追う俺と俺の服をガッチリ掴む京介

コンビニから少し歩いてトンネルの前、…というより

ぽっかり穴の開いた場所につく

「ねーぇ…子どもがいるよぅー…」

あいつ等に気ぃ使って小声のわりには

うぇっうぇっ半泣きですがり付いてくんねんな

「怖いならその頭の目に被せとけ…」

じゃあ抱き着いていい?って…

お前が女の子やったら大歓迎や

もはや泣き落としで腕組み状態

嫌いなもん見えるのも嫌な体質やねぇ…

チラチラ後ろを伺いながら

「でっ、わ…入ります…入りますよ…ちゃんと着いてきてね、?

…一緒に来てね?」

と、…田中がトンネルの中に一歩踏み出した時

にやっ…

子どもが笑った

顔の端まで口角を曲げて、笑った…

「ッ…田中、しょうがないから俺が先頭にたってやる」

手首に巻いてる数珠を握りしめ田中を追い越してトンネル内にはいる

田中達も後を追い中にはいってきた

「うっわー…くれぇ…」

「携帯の灯りじゃ間に合わなかったなぁ…先が見えねぇ」

なるべく近づき小声で話す

俺の言ったことは守ってるみたいやな

「な…っ」

上を見ながら歩いてた藤岡がこっちに顔を向けて、口を抑えた

「…藤岡くん、の上が」

今度は京介が上を見て声をあげる

それにならって他のメンバーも上に注目

「あっ…れって…」

「お、…札?」

黒い…

お札じゃない…

藤岡くんの上が、黒い

京介はこう言いたかったんだ

黒いものを認識したとたん鼻腔に嫌な臭いが立ち込めた

「っ…ゴホッゴホッ」

「おい、数珠握っとけ」

臭いにあてられた京介が噎せ返る

「ちょ…なんか泣き声聞こえねぇ?」

藤岡がトンネルの先を指差して言う

多分、女のすすり泣きの声やんな

ビリビリビリッ…

握り締めた数珠が痺れたような気がした

「まじっ…だ…」

「ちょ、っ…ガチでッ…一回黙ろうぜ」

…長居はせんほうがいいかも

「いいな京介、鼻摘まむなよ

また吐くぞ」

手首を握り鼻先に持って行く手を止める

「おい、いいか

皆ゆっくり入ってきたとこ向け

俺が行けっつったら走れ、全速力

コンビニの前まで

藤岡は先頭切れな」

ゆっくり…

ゆっくり…背を向ける

女の声に、女の姿に

すすり泣く声じゃなく

クツクツ笑う声に……

「っ…走れッ!!」

煌々と光るコンビニに向かう

誰も振り向かない

藤岡は先頭切って走る

子どもがニヤニヤ笑ってる

心底楽しそうに、俺等で遊んでる

ダンッ!

それが悔しくてそいつの前を通るとき

デカイ足音を立てた

口端を深くして消えた

コンビニに着いた時には

10月にも関わらず汗だくだ

「お前等こっから動くなよ」

京介を座らせ

3人には俺の数珠を握らせてコンビニに入る

9時過ぎた店員はどいつも無愛想やな

食塩とミネラルウォーターを2本買って外にでた

あいつ等の目の前にいって塩をぶっかける

「ぶっ…ちょっいきなりはッ」

「景くん怒ってるーッ(汗)」

「ふざけっ…てめっ」

無視して塩を入れたミネラルウォーターで口ゆすがせ

「お前等先帰ってろ

ちゃんと京介送ってけよ?」

えっ、うっ…えっ

キョドってる3人と

裾つかんで行かせない京介…

「今は駄目、怒ってる

あの子怒ってる…

次は絶対食べられる、から」

普段の京介からは考えられないずいぶんしっかりした言葉

「「「……えぇーッッ?!」」」

「今は無理っ!行かせねぇよっ

隊長として皆一緒に帰る権利があるんですっ!」

田中達も抱き着いてきて…

口々に行くな行くなと

「だぁッ、もう…黙りなさいな」

腕を振りほどいてチャリに股がる

「おら、帰らへんの?」

 「…おぉっ!帰る帰るっ」

「よっしゃぁ 帰るべーっ!」

それぞれチャリに股がり勢いよく漕ぎ始める

後ろに乗った京介がぽっかり開いた口を見つめ…

手を振った

鼻腔にあの臭いが掠めた気がした。

しばらくたった時

妹達があのトンネルに向かったのは別の話

怖い話投稿:ホラーテラー kさん  

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