これは私の友人の話です。
※幽霊は出てきません。
彼女が小さな時に両親が離婚し母親に引き取られたそうです。
ここからきっと彼女は、幼心にも傷付きそして少しづつ壊れて言ったのかもしれません。
18歳の時にバイト先で出会った12歳年上の男性とお付き合いが始まったそうです。
彼女は彼に肋を何本も折られ、顔面は黒く腫れ上がる程DVを受けていました。
それでも別れないのです。何故か?‥‥それは寂しいから。殴られても1人ぼっちじゃないから。 1人ぼっちにならずに済むなら殴られても温もりが欲しいから側に居たそうです。
それも‥八年もの間も…。
殴られ続け、それでも警察に逃げたらまた1人になるからと、まともに病院にも行かずにいました。
今でこそ他の事でレントゲンを撮る機会があると、至る所折れた形跡が沢山あるという話でした。
母親は毎日水商売で飲んだくれ、家に帰らず男の家を転々としていたそう。
こんな状況が彼女を歪んだ寂しさを埋める行動に出させたのかもしれない。
しかし、ある時から彼女は変わりました。これが彼女の転機になるのでした。
あんなにも殴られ痛めつけられても一緒にいた彼を憎しみ、そして怨み‥当時の彼女は憎悪の塊となっていました。
理由は‥もう彼要らないから。『でも別れてくれないの。 私自分の居場所見付けたらから!』
私には意味が分かりませんでした。居場所?友達の私が助けたいと何度言っても抵抗してばかりいて話すら聞かなかったのに。
彼女は妻子在る男性に惚れたから。彼を愛しているから彼と一つになりたい。だからあの男は邪魔なんだ!!!と。
私には何もかも彼女が考える事も、行動も理解出来なかった。
しまいにはDVをしていた彼が邪魔だから。彼が生きていれば別れられないから。死んでしまえばいいのに‥と毎日毎日、それこそ毎日朝から晩までと言っていい程憎しみを口ずさんでいました。呪いの呪文‥呪詛ともいうように。
私も今でも忘れません。そう、それから数ヶ月した4月の終わり桜も咲き散る頃でした。
彼は高速を走っている最中に大動脈瘤破裂で突然死亡してしまったのです。
夜走っていたため大事故にはならなかったようですが、車は大破。運転席とハンドルも彼が大量に血を吹いたために真っ赤だったそうです。
死亡解剖が行われ、薬物、居眠り運転では無く、大動脈瘤破裂が死亡と車の大破に繋がったようでした。
その知らせを聞いて私に連絡してきた彼女の顔を一生忘れません。いや‥忘れられないのです。
人は誰かが亡くなると涙が出たり、哀しむと思いますが彼女は違った。
笑っていた。とても眩しいくらいの笑顔で。そして嬉しくて泣いていた。
人間は憎しみを絶やす事なく毎日毎日口ずさみ、呪いの言葉を吐けば人を殺す事が出来るのかと愕然としました。
そして彼女は妻子ある男性に近付き、そして関係をいとも簡単にもったのです。
それからしばらくが過ぎ‥既婚者の彼との関係が二年も過ぎようとした時に彼女からこう伝えられました。
『私ねデキたみたい!嬉しい!産もうと思うの!
だって‥彼との絆とか繋がりが結ばれるでしょ(笑)』
私はそんな異常な彼女に掛ける言葉も見付からず、自分の人生を考えて結論を出して欲しいとだけしか言えませんでした。
暫くすると彼女は本当に出産してしまいました‥。
妻子在る男性の子供を生んだ。それだけでも世間常識一般からすれば正しい事とはいえないのだが、彼女は心底嬉しそうだった。
『だってキヅナが生まれたんだよ?これで彼は私から逃げられない(笑)』
ただ、彼女は他の似た類いの女性と違って慰謝料も養育費ももらわず朝から晩まで働いて子供との生活を維持していました。
どういう訳か、また既婚者の彼もしっかり認知だけはしたらしく彼女に良かったねと言うと‥
『だってね(笑) 毎日また願ったのよ私。私のものになれ!私のものになれ!私のものになれ!って。そしたらそうしてくれたの彼は!』
目をギラつかせ、満面の笑みで語るその表情に常軌を逸していると‥彼女の言動に寒気を感じたのを覚えています。
やはり彼女の発する言葉は呪いなのか‥呪文なのか‥私は決して彼女のその恐ろしい隻眼に的を置かれたくないと感じた。
また暫くの時が流れた。
今度は既婚者の男を捨ててしまった。
理由はというと、やはり要らなくなったから。
それだけならまだしも、彼は別れた途端にリストラ‥事故に巻き込まれ骨折の重症、果ては離婚とやはり蛇に睨まれた蛙の如く、災難と云うのか厄が怒涛のごとく立て続いていった。
こんなにも彼女には恐ろしい負の力を持ち合わせているのかと恐怖を感じぜつにはいられなかった。
彼女にある分岐点が訪れると必ず依存する男性が変わり、そして捨てられた男は死か災いが訪れる。
彼女には一体どんな力があるというのか‥私はどんどん彼女から遠ざかる様になっていました。
今は離婚歴のある男性とまた改たに子供を産み家庭を作っています。
誰かが居なきゃ寂しく、寂しさを埋める誰かが欲しい。けれど自己の都合良く要る、要らないと裁きを下す彼女‥。
そう‥その友人の彼女とは私自身であって私じゃない?
‥けど私ノ中ノ私デアッテ私ジャナイ?デモ私ダヨ私ガ寂シイカラ私ノ中ニマタ私ヲ作ッタノ。私ノ話私ノ物語。ワタシハアナタ、アナタハワタシノトモダチワタシノナカノワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシ ネエ?アナタダレ?ワタシデショ?サミシイノハイヤダカラヒツヨウナトキダケソバニイテ。
怖い話投稿:ホラーテラー XXFさん
作者怖話