これは、私が小学生の頃のお話です。
もちろん、実体験です。
夏休みのその日、母の実家に遊びに行き、いとこたちと遊びまくって、その疲れからぐっすりと眠ってしまいました。
眠った場所は、お座敷。
座敷を囲むように廻り廊下があり、ちょっとしたひなたぼっこを楽しめる縁側があります。
縁側の外は、広い裏庭があり、川の横に建てられたその家の勝手口には、直接川原に降りられる、石の階段がありました。
いつしか私は夢を見ていました。
顔は見えない、青いズボンの男の子が
『遊びに行こうよ!』
と、しきりに誘いかけます。
当時アニメで見たばかりの“ピノキオ”の姿に良く似ていたその子について行きかけたのですが、不意に
『遊びに行く時は、必ずどこに行くのか、何時に帰るのか言ってから行きなさい』
と、いつも口をすっぱくして言う母の言葉を思い出しました。
手を伸ばし、ついて行きかけた私は、男の子に
『ちょっと待ってて!お母さんに言ってからじゃないと遊びにいけないから』
と言うと
『大丈夫だよ。すぐ近くだから』
としきりに急かします。
何となく、不思議に思いながらも
『でも…言っとかないと、お母さん、怒ると怖いんだもん。すぐ戻るから待っててよ!』
頭の中は、早くお母さんにお許しもらって、男の子と何して遊ぼうかな?というウキウキした気持ちでいっぱいでした。
だけど男の子は、不意に冷たい声になり
『じゃあ、君とは遊べないよ。バイバイ。』
と後ろに下がります。
ピノキオに嫌われちゃった!と悲しくなり追い掛けようとしたのに、あっという間に彼は居なくなりました。
目覚めた私は、下半身座敷、上半身廊下という、恐らく外に出ようとした恰好で倒れており、それを見つけたおば達や家族みんなに、寝相が悪いと散々からかわれました。
後日。
その家の裏の川から、男の子の遺体が見つかりました。
カニを捕りに川に入り、流されて、行方不明になっていた子でした。
青いズボンを穿いていたそうです。
川の生き物達に突かれ、顔は判別つかないほど崩れており、服装でその子だと判ったそうです。
それで、思い出しました。
あの夢の男の子は、顔が見えないのではなく“無かった”のだと。
喋る時も、口があるはずの場所に何もないので、声だけが脳裏に響いていたことに…。
私が倒れていた廊下の外…裏庭の行きつく先は、実は2〜3メートル程の高さの崖になっており、当時は柵もなく、真下は川だったんです。
あのまま外に真っすぐ出て行っていたら………。
ゾッとすると同時に悲しくなった出来事でした。
そして、いつも厳しく言い聞かせてくれてた母に心底感謝しました。
あれがなければ、ついて行ってましたから。
怖い話投稿:ホラーテラー はにゃさん
作者怖話