俺はその日彼女のアパートに泊まりに来ていた
彼女の作った料理を食べ、一緒にDVDを観る
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。どちらともなく俺達は眠りについた
夜中に俺は目を覚ます。携帯で確認すると時間は2時。ノロノロとベッドから這い出し、トイレに行こうと立ち上がった
……?
なにか違和感を感じる
俺(なんじゃ?)
俺は部屋の中を見回す。窓に視線がいったとき、一瞬自分の目を疑った
月明かりに照らされ、カーテンの向こうに人影が見える
俺(まさか……ストーカー!?)
自慢じゃないが彼女はかなりの美人だ
俺は窓に近付くと、一気にカーテンを開ける
男がいた
俺「わりゃなんしとんじゃ!」
俺は鍵に手をかける
そこで若干ヘタレた
俺(いや開けるのはマズイ、入ってきたら大変じゃ。ここは警察か?)
一気に冷静になった。そして俺はありえないことに気付く
俺(ここって……四階だよな……)
俺は一歩後ろに下がる。それを見た男は笑みを浮かべ消えた
彼女「なに~?」
寝惚けた様子でベッドから声をかけてくる
俺「な、なんでもないよ」
俺は彼女を怯えさせないようにそう言うとカーテンを閉めてベッドに戻った
当然眠れるはずもない。俺の体はガクガク震えていた
翌朝、窓の外を確認するが、やはり足場になりそうなものはない
彼女に昨晩のことを話す。彼女は怯えた様子で、この部屋を出たい。一緒に暮らして。そう言ってきた
俺は彼女と暮らす部屋を借りる為に、愛車のクラウン、パソコン、その他諸々を売り払い金をつくった
彼女と暮らし始めて2ヶ月。やはり部屋に問題があったのか、あれ以来男がみえることはなかった
ある日、俺が仕事から帰ると彼女が神妙な面持ちでこう言った
彼女「出ていって」
俺「……え?」
彼女「だからこの家から出ていって」
俺「出ていってって、この家は俺の……」
しまった……この家を借りるとき、名義は彼女の名前にしたんだった
彼女「今すぐ出ていって」
こうして俺は2月の寒空のもと家を失った
俺(どこにいけばええんじゃろ……てゆうかどうやって荷物運ぼう……)
俺には原付しかない
ため息が漏れる
吐き出した息はとても白かった
怖い話投稿:ホラーテラー Mさん
作者怖話