中編5
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Yowll Shard City(Begining2)

AM11:38。

ヨウルシャード西。

 Deepwood riv.

(ディープウッド川)

回収された女性の遺体が警察車両の荷台に搬入された。その様子を見届け、レジダブが口を開いた。

「熊か何かに喰われたのか?あの死体…」

「分からない。まあ、少なくとも自然死では無いだろうな…」

バイルとレジダブがパトカーに乗り込む。

と、車載無線がコールしている。

「こちらバイル巡査…」

『こちら433号車、バクスター。バイル、そちらの現場から下流3kmに居るんだが、乗り捨てられた不審車両を発見した。』

「了解だバクスター。

ついでに、今その車を調べる事は出来るか?」

『ああ、大丈夫だ。今丁度中を見てるとこだよ。

……おいマジかよ。』

「どうした?」

『なぁ、バイル。今朝お前達が調べてた車があったろ?』

「ん?あのゲロ車の事か?一体それがどうした?」

『同じだ…』

「…同じって、99年式のリンカーンか?」

『違う、車種の話じゃない。こっちの車はボイジャーだ。同じって言ったのは、車内に大量の袋が置かれてるから、状況が似てないかって言ったんだ。』

「車の鍵は?」

『ロックされてる。

……あ!いや、待て!トランクは開いてる。…っうぉ!?何だこの酷い臭いは!?』

「バクスター、気を付けて袋の口を開けてみてくれ。どれでもいい…」

『ああ、わかった…

うぉっ!?…だよこれ!?

ヒデェ!勘弁してくれよ、バイル!!』

「嘔吐物か?」

『ああ!そうだよ。

…ックソ。こりゃしばらくシチューは食えねぇな…』

バクスターの声を聴きながら、バイルは推理した。

そして、何かに気付いた様な表情で無線の向こうのバクスターに頼んだ…

「なぁ、バクスター。

その車の中に所有者が特定出来そうな物は在るか?」

『サンバイザーに運転免許証が挟まってた。

えーと、待ってくれ…

いいか?恐らくだが、車を運転していたのはジュリア・コートニー。住所は、ハインデイル・ブロンズ通り338-2だ。』

「…わかった。バクスター、署のレッカーを向かわせるからもう少しそこで車を見張っててくれないか?俺達もすぐに行く。」

『ああ、わかったよ。』

バイルは無線を切ると、レジダブに言った。

「聞いてたろ?恐らく何かの病気だ。」

「まだ決めつけるのは早くないか?他の可能性だって考えられるだろ。」

「他…?例えば何だ?」

「エイリアンとか…」

「レジダブ。今はふざけてる場合じゃないと思うが。」

「何でだよ!だってエイリアンはいるんだぞ!お前テレビ見たこと無いのかよ!?腹を破ってバァンて出てくるだろっ!」

「あれは映画だ。フィクションだ。現実じゃない。」

「え…」

レジダブのこの反応にバイルは、呆れた表情を見せながらパトカーを走らせた。向かうのは不審車両が発見された川下だ。

辺りを深い森に囲まれた自然の町、このヨウルシャードに一体何が起ころうとしているのか?

バイルは一人考えを巡らせた…

『332号車。バイル、レジダブ、応答しろ。』

無線の声はベンだった。声の様子からして、かなり急ぎの用事らしい…

「はい。こちらレジダブ巡査です。」

『2人とも、今すぐ市立病院に向かってくれ。』

「ですが、バクスターを待たせたままですよ?」

『バクスターには既に事情を話してある。緊急事態だ。朝病院に搬送されたあのゲロ車の男が病院から脱走した。』

「脱走!?あの病状で?」

『詳しい話は病院の医者に聞いてくれ。こちらも今手が放せない状況なんだ。』

「一体何が起きてるんです!?」

『今話してる暇はない。とにかく、病院へ急行してくれ。』

ベン捜査官からの無線は一方的に切れてしまった。

PM12:40

ヨウルシャード市立病院

バイルとレジダブが到着した時、病院前は車と人で溢れ返っていた。

人混みをかき分けながら2人はやっと病院の中にたどり着く。

待合室は、紙袋や、洗面器を抱えた人間逹と彼等が嘔吐する音とで異様な世界になっていた。

「何だこれ。あの男と同じ様な奴らばっかりだぞ。」

「皆この町の住民だ。

何なんだ?あの男は感染性の何かにかかっていたのか?」

異臭立ち込める廊下を歩くバイルとレジダブの前に、白い防護服に身を包んだ男性が現れた。

「初めまして、私はDr.メイスン。ヨウルシャード市警察の方ですね。」

「ああ、そうだ。俺はレジダブ巡査。で、こっちが相棒のバイル巡査。」

簡単に互いの紹介が済むと、バイルは本題を突いた…

「一体何があったんだ?」

「まだ事態を把握しきれていないのが実状です。

ハインデイルでの感染者がこんな場所にまで来てるなんて…」

「おい待て待て!今、感染者と言ったな?ということは、これは何かの病気なのか?」

バイルのこの質問に、メイスン医師は怪訝な顔をした。

「……まさか、警察関係者には情報が流れていると思っていたのに。」

「何なんだよ?詳しく話してくれ!」

レジダブがしびれを切らせた様な口調で言った。

メイスン医師は言葉を続ける…

「3週間程前に、ハインデイル総合病院に急患が運ばれてきました。彼の名はポール・ヘイスト。彼が最初の感染者です。」

バイルが聞く。

「一体何の病気なんだ?」

「今の所分かっているのは、激しい嘔吐と45℃近い高熱が初期症状として現れ、次第に筋肉が固くなり、身体中の臓器や組織が破壊され、末期になると腹部が異常なまでに膨張し破裂、最終的に死に至る。という位で…詳しい原因や何がそれを引き起こすのかも分かってない状況です。」

「この町の住民にも感染者が出てる。きっとあの男が感染原なんだろうが…

だとしたら、俺達も感染しててもおかしくない筈だ。俺達は奴の嘔吐物や奴自身とも接触してるしな。」

「それが分からないんです…。ただ、分かる事は感染してから発病するまでのスパンが人によってかなりバラつくということ。それから、これはあくまで憶測ですが…何らかの刺激を受けて始めて発病するとか。」

「ちなみに、発病までのスバンは個人個人でどの位差があるんだ?」

「早くて数時間、遅くて数ヶ月。それが今までのデータから解っている範囲です…」

「潜伏期間がそんなにバラつくなど有り得ない。」

「その通りです。」

「なら、Dr.メイスン。あなたの憶測が正しいのかもしれない。」

「まあ、何とも言えませんが…

とりあえず、エリックの病室へ案内しますよ。」

3人は隔離病室エリアに向かうエレベーターに乗った。隔離病棟エリアに降りるとそこには荒らされた廊下と粉々になった診察機器、そしてエリックのものと思われる血の足跡が残されていた。

事態は刻一刻と進展していく…

怖い話投稿:ホラーテラー ジョーイ・トリビアーニさん  

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