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短編2
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丸い物が怖い

私は球体が怖い。

写真や絵画など、平面に映されているものなら平気だけど、

立体で存在する球体が恐ろしい。

一目見ただけで、恐怖でパニックになってしまう。

世の中には、尖端恐怖症というものがある。

刃物など尖ったもので傷つけられたりしたことが原因で、

尖ったものに対して、異常なほどの恐怖を感じる症状。

私の場合も、これと似ている。

きっかけは子供の頃の出来事だった。

近所で交通事故が起こった。

トラックとトラックが衝突して、派手に壊れた。

野菜や果物を積んだトラックと、スポーツ用品を積んだトラック。

事故が起きた場所は長い坂道の上で、

荷台から落ちた大量の荷物が、坂道を転がった。

坂の上から転がってくる、大量の球体。

スイカ、メロン、ジャガイモ、トマト、レモン、ブルーベリー、

リンゴ、オレンジ、グレープフルーツ、キウイ、パイナップル、

野球のボール、ボーリングの玉、テニスボール、ゴルフボール、

バスケットボール、バレーボール、サッカーボール、ピンポン玉。

丁度そのとき、私は坂の下を歩いていた。

まだ幼く小さかった私の身体は、

球体の波に飲み込まれ、球体の中に埋まった。

私は全身を骨折する重傷を負い、入院した。

以来、私は球体に対して恐怖を抱くようになった。

退院した私は、手始めに、部屋にあった地球儀を叩き割った。

ボールなど球状のオモチャの類も、全部捨てた。

親に注文をつけ、球状の野菜や果物は、食卓に上らなくなった。

パンも丸いパンは食べない。食パンやフランスパンだけ。

トイレの電球や芳香剤も、球状でないものに取り替えた。

でも、一歩外に出れば、どうしても球体が目に入る。

野菜や果物やスポーツ用品のボールだけでなく、

丸い形のオブジェや、ドーム状の建物も駄目。

夜空を見上げれば、月という巨大な球体が浮かんでいる。

そうして、私は部屋に引きこもるようになった。

私の部屋は、角張ったものに埋め尽くされている。

角張ったものに囲まれていれば安心でいられる。

食事は親が運んでくれるし、風呂とトイレ以外では部屋から出ない。

人と会わなくたって生きていくことはできる。

人恋しくなったら、パソコンを使えばネット上で他人と交流することもできる。

欲しいものがあれば、通信販売で注文すればいい。

たまに、モニターに球体が表示されて不快になることはある。

球体間接人形などは、おぞましくてたまらない。

それでも、実物でなければ、まだ大丈夫。

パニックになるほどではない。

ああ、けれど、なんてこと。

どうして今まで気がつかなかったのか。

あるとき、人体の仕組みを説明したサイトを見ていた私は、

恐ろしいことに気が付いてしまった。

こんなところに球体があったなんて。なんて恐ろしいのかしら。

私は発作的に、自分の眼球を手でくりぬいた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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