家の中の隠れ箱を開けると十字架があった。
古ぼけているが、見るからに呪われそうな格好をしている十字架だった。
父親は言った。
「それは織田信長の怨念がこもる十字架だ」と…。
俺は友人Aと2人で船着き場まで行った。
遊覧船のフラワー号に乗り、隠れキシリタンの居る島へ。
昼に島へ着くと、村人達は陰気そうな顔をしていた。
人口100人位の小さい島。
まともな商店も娯楽も何もない。
彼らは毎日何をしているのか…。
友人Aは言った。
「あの神社が怪しいぞ」
俺たちは、調査もそこそこに神社目がけて突撃した。
神社の奥には電灯があり、その下には村人達があやしい儀式をしていた。
(隠れキシリタンの儀式…)
俺は直感的にそう思った。
Aはやぐらの上に上がり、村人をしずめた。
「この平成22年の現代、君たちはこのような事をしているのはおかしい」
すると、奥から村人のトップを牛耳っている村長が出てきて、納得した。
「友人Aのいうことはもっともだ。このような事はもうしないようにしよう」
聞くところによれば、20年も前に、ある学者がこの島へ島流しにあって
その時に消息不明になったということだった。
海の怒りを静めるために、海岸沿いに祠がいくつも作られたという。
彼らの儀式も、悪気があってやっているわけではないと解り安心した。
俺たちは隠れキシリタンの肖像を貰った。
この肖像に十字架を乗せれば、呪いが解ける。
父親がすぐに手をかざし、呪いを解除した。
「これで織田信長の怨念が消えたのだ。お前は救われたのだ…」と。
喜びながら、船に乗って自宅まで辿り着いた。
戦利品は多い。
家のドアを開けると、既に父親は事切れていた。
友人Aは言った。
「既に遅かったのだ…怨念は俺たちの手に負えない…」
天下分け目の関ヶ原で破れた信長は、その無念を十字架に秘め、
怨念だけが隠れキシリタンとなって生き残っていたのだ。
日本を統一できなかった無念。
俺と友人Aは、あまりの巨大な怨念に驚くばかりだった。
怖い話投稿:ホラーテラー ミルフィードさん
作者怖話