始発駅から乗車した僕は、睡眠不足のせいもあり深い眠りについていた。
気が付くと電車の中は満員だった…
次の停車駅を報せるアナウンスが流れた。
電車が停まり、人が降りていく。そしてまた沢山の人が乗ってくる。
朝の満員電車など大概こんなものだ。
僕の前に、1人の女性が立った。
女性は吊革に掴まり、片手で携帯をいじり始めた。
まあ、どこにでもいる普通のOLといった感じだった。
僕は特に彼女を気にも留めずに、もう一眠りしようと目を閉じた。
この時、僕は目を閉じた瞼の裏側に、何故かハッキリとさっきの女性が見えている気がした…
何か不自然なものを見たような気がしてならなかった。
僕はもう一度、目を開けた。
…そして気付いた。
不自然さを感じた理由に。
彼女の体は透けていて、反対側を向いて吊革に掴まる男の人が見える。
この瞬間に、僕は全身の血の気が引いた。
まさか、朝の通勤時間帯に幽霊!?
怖くなった僕は、無理やり目を閉じ、寝たフリを決め込んだ。
きっと彼女の正体に気付いてはいけない。
気付いたなら、何が起こるのか大体分かる。
気にしちゃいけない、気にしちゃいけない。と、何度も自分に言い聞かせた。
身体中脂汗でベトベトになっていた。
電車が停車駅に着き、停まった。
辺りの人の気配が少なくなっていくのが何故かわかった。
その電車を降りる人の気配の中に、彼女もいるのだと感じた。
電車が駅を発車すると、身体中の脂汗が瞬時に引いていった。
僕は、きっと彼女はさっきの駅で電車を降りたのだと思い、目を開けた。
…彼女はまだいた。
僕の顔を覗き込むように、身をかがめて、無表情で僕を凝視していた。
余りの恐怖に僕は気を失った。
気が付けば、電車は終点に到着していた。
僕は電車を降りた。
会社は、もう完全に遅刻になる時間だった。
仕方ないので、上司に遅刻する旨を一報しようと携帯を取りだし、画面を見た。
何故かメールが数件入っていた。
そのメールは全てが同じアドレスから送信されていた。メールの内容は一文字の平仮名だけ。
最初のメールから順に開いていくうちに、僕はあることに気が付く…
メールに打ち込まれた、一文字の平仮名をメールの着信順につなげていく…
き
が
つ
い
て
い
た
く
せ
に
・
・
・
気が付いていたくせに…
ふと、僕の耳元で誰かが囁いたような気がした。
僕が恐怖していると、携帯がまたメールを受信した。
同じアドレスだった…
恐る恐るメールを開いた。
そのメールにだけは、一枚の写真が添付されていた
僕は添付されていた写真を開いた。
その瞬間に、僕の目に飛び込んできたのは、さっき僕の目の前に立っていたあの女性の無表情の顔だった…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話