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中編6
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筆談

初めての投稿です。

この話は私(男)が高校受験を前にした中学3年生の冬の日の実話です。(今から15年位前です。)

私が当時住んでいたのは、鳥取県の鳥取市でした。

中学1年、2年と散々勉強をさぼっていた私ですが、3年になり「このままじゃあマズイ」と気付いて、ようやく焦って駅前の進学塾に秋口から通うようになりました。

家は鳥取駅から歩いて30分か40分程度だった記憶があります。

塾は、その駅の目の前にありました。

当然、元気な中学生だった私は自転車で通っていました。夜遅くなる事もしばしばでしたが、特に気にしたこともありませんでした。

鳥取県は日本海に面しているので、冬は若干ですが雪が降ります。(実は鳥取に来る前は北海道に住んでいたので、本州の雪はへっちゃらでした。)

雪が降っても、気にせずに自転車を漕いで憧れのハイスクールライフをゲットするために塾に通っていたのですが・・・・。

珍しく「その日」は、自転車は走行不可能な位まとまった雪が降ってしまいました。

しょうがないからその日は、片道30分~40分かけて歩いて通いました。

確か、受験勉強もかなり追い込みの時期だったと記憶しています。

授業を終えた後外に出てみると雪がちらついていました。来た時よりも積雪は多いです。

ただ私は北海道育ちだったので、本格的な積雪にワクワクしていました。

暖房がガンガン効いた塾に長時間いたせいで、体もかなり火照ってたのでちょうどいいや位でした。

私が通っていた駅前の塾には同じ方向から来ている人がいなかった為一人で行き帰りしていました。

その日も雪がチラつく中を一人で帰っていきました。

家に変えるルートは簡単です。駅からずっと「高架」に沿って進んで行くだけでした。

鳥取市なんで夜は結構静かでした。(笑)

中3にもなって雪玉なんかコネコネしながら歩いて帰った記憶があります・・・。

駅から20分程離れるともう人の姿は見えません。その日は結構な積雪だったせいかいつもよりも車の数も極端に少なかった気がします。

まっすぐ伸びる「高架」に沿ってただただ歩いていました。視界には、オレンジ色の街灯に照らされた雪がカーテンのように揺れて光っているのが入ります。その奥には漆黒の闇があたりを包んでいます。

前には、誰もいません。

後ろにも・・・。ちょっと離れた所に人影を初めて確認しました。

その距離は、50メートル以上はありました。

まぁ、別に気にしないで普通に歩いていたのですが、少し音が気になりました。

「シュッ、シュッ・・」

もう一度後ろを確認すると、さっきよりも人影は近くに見えました。

「シュッ、シュッ、シュッ・・・」

どうやら、後ろの人の衣類が擦れるような音だと感じていました。

「ウインドブレーカーかスキー服の上下来てんのかな?」なんて事を考えていると・・・

急に「キュッ!キュッ!キュッ!」と雪道を小走りで私の方向に向かってくる音が聞こえました。

この時初めて「恐怖」を感じました。

後ろを振り返ると、さっき見えた人影は、もう10メートル位の距離になっていました。

かなり暗い道で他に人影もなかったので不気味だったのですが、「急いでいて抜かしていくんだな」と思っていたら・・・

次の瞬間、何かが後ろの方から私の肩に触れました。

「ビクッ!!」なって振り返ると、そこには・・・これからスキーですか?と尋ねたくなるほど全身防寒ばっちり(黒っぽい上下のスキーウェア)で黒っぽい(色ははっきり覚えていない)毛糸の帽子を眼深くかぶり、いかにも重そうなリュックを亀みたいに背負う男が立っていました。

男は、私を呼びとめるために少々走ったのか、息が若干切れていて「はぁ・・はぁ・・」というのが、なんとも気持ち悪かったです。

男は、肩を叩いて呼び止めたにも関わらず、何も言葉を発さず、息を切らしながらこちらを観察しているように感じました。

流石に気持ち悪かったのですが、もしかして前を歩いていた私が何かを落としてわざわざ届けてくれたのかな?と思っていると・・・。

おもむろに、ズボンのポケットから「メモ帳」のような物とペンを取り出して、何やら書き始めました。

思わず「なんですか??僕に何か用ですか??」と勇気を振り絞って問いかけました。

男は、帽子を眼深にかぶっていたので年齢は不詳でしたが、身長は私より頭一つ以上大きくて体もごつそうでしたので、中3の私にはかなり怖かったです。

私の問いかけにも一切応じる事もなくひたすら何か書いていました。

いよいよ怖くなった私は、「逃げよう・・・」と思っていると

男は、メモ帳を私に見せてきました。

「わたし は みみ がきこえません」

私は、「アッ・・・」と思って、気持ち悪いなと思っていたことに、少々罪悪感を覚えました。

きっと何か伝えたかったのに、しゃべれないから肩を叩いて呼び止めてくれたのか、と少し安心したので笑顔で対応しました。

私がなんですか?というような軽い笑顔をしていると 男はすぐさま「続き」を書き始めました。

「何かなー?」と待っていると・・・・

「わたし は しかぎこうし に なりたくて べんきょう しています。」

???

予想していた内容と下記離れた書き込みに、「あれ?」という感じになりました。

男の表情は、人懐っこい顔になっていて、一生懸命こっちの様子を伺っているように見えました。

なんで、こいつの自己紹介を聞かなきゃいけないの?と思いましたが、何か困っているのか?と思って、「それで?」という表情を返すと・・・

男は、思い切った顔になって、書き始めました。

「あなた の は を さわらせて ください」

??????

「え??」

沈黙・・・・

男は、じっーとこちらの様子を伺っています。

「普通じゃない」

私は、これはまずい、普通の人じゃない、まずい、まずい、まずい・・・・と、頭の中で連呼していました。

「いえ、ちょっと・・・

あの いやです・・」

と後ろに一歩、二歩・・・と後ずさりをしていると、男は意を決して、

グイーーーっと 私に寄せてきました。

「うわぁぁぁ・・・・ もしかして 殺されるの??」と感じると 一気に涙目になりました。

男の顔は目の前で、興奮しているのか「はぁ・・はぁ・・・」という鼻息が聞こえる距離です。

次の瞬間

!!!

男の指が強引に伸び、顔のあたりでかざしていた私の両手をすり抜け、確実に「前歯」に触れました。

今でもその感触は、覚えています。

もしかして「毒」を塗られたかも?と思いパニック状態です。

「終わった・・・」と一気に力が抜けたようになった私を目の前にした男は、意外にもそれきり攻めては来ず、なにか言葉にならないような言葉を

発して(極度の絶望感で正直あんまり覚えていない)

いきなり、真上に飛び上がり、物凄い勢いで高架の下をくぐり抜け、ちょっとした崖のような場所を飛び跳ねながら逃げて?行きました。

奇声のような声が静寂をうち破って響いていました。

その場に立ち尽くしていた私は、我に返り、まずは、無造作に雪を掴んで口に詰め込んで何度も何度もうがいしました。

そこからは、記憶があいまいですが、男が逃げていった方を背にして一目散に家路についたような気がします。

頭の中は真っ白でした。

家のついて家族の顔を見た時、思いっきり力が抜けました。

同時に、怒りもこみあげてきました。とにかく、聞いてもらおうと一番下の妹を寝かせていた母親に今起きたこと話したのですが、半分寝ているのか

???な状態で話しになりませんでした。今となっては(笑)

結局どうやら「毒」も塗られておらず、今も元気ですが、あの日の出来事は、私が今まで生きてきた中で一番恐怖した出来事でした。

追伸・・・志望校には受かりました(笑)

怖い話投稿:ホラーテラー ニブルスさん  

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