私が保育園に通っていた頃の話です。
当時まだ車の免許が無かった母親に自転車の後ろに乗せられ、近所のスーパーに買い物に来ていました。
母親は買い物がいつも長くなるため、当時から本が好きだった私は、レジ横とかによくあったくるくる回る台に置かれた「世界名作絵本」などを読んで時間をつぶしていました。
ボーッとしていた私がスーパー内をうろちょろすることは絶対無かったので、母は私がいつものように絵本を読んでいるのを確認して、買い物していました。
レジに支払いにきた母と合流する、それがいつもの流れです。
その日もいつもと同じでした。まだ字の読めなかった私は絵だけを夢中で見ていました。
すると向かい側から突然、
「なにしてるの?」
と、声をかけられました。声の方向に顔をあげると、やたらとニコニコしたおじさんがいます。
「本みてるの」
人見知りで警戒心が強かったため、知らない人と話したくありませんでした。
一言だけ返し、また本に顔を戻します。
「何歳?ひとりなの?」
「なんたらかんたら~‥」
小さかったため、なんと話し掛けられていたか曖昧ですが、おじさんは質問をやめません。
私もニコニコ顔のおじさんに少し警戒を解いたのか、それとも暇だったのか、本を見ながら受け答えしていました。
「かわいいね」
「どこの保育園行ってるの?」
「どこに住んでるの?」
「遊びにいかない?」
ここら辺から、私は恐怖を感じ始めました。
「ママときてるの、ママを待ってるの」
私は恐怖を感じだしてから、母といることを強調しました。
でもおじさんは怯みません。ニコニコしたままです。
次第に気味が悪くなり、
「ママのところに行く!」と宣言して本を置き陳列棚の通路に入りました。
私は小走りで母を必死に探します。
他の棚の通路と真ん中で合流する、スーパー特有のあの真ん中の通路に出ました。
ふと隣の通路をみると、おじさんがいます。隣の通路で追ってきていたんです。
私は半泣きでした。
目を棚越しに合わせながら、おじさんはニコニコと笑っています。
ある通路で母親を見つけたときは、半狂乱でした。「変なおじさんが追っかけてくる!!」
「え?!」
半信半疑の母が、棚の間からニコニコとこっちを見ているおじさんをみて、同じく半狂乱になり私を抱き抱えスーパーを出たのは言うまでもありません。それから二度とそのスーパーには行きませんでした。
今でも覚えている恐怖です。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話