吉原と高村は何が何だか判らずただ、二人しておろおろ、ビクビクするだけであった。閉めた筈の窓が開いていたなんて…それも全部…。
最初に口を開いたのは吉原だった…。
『部長…ちょっとあの家の件でお話しがあるんですが…良いですか?』
そう言って会議室に行ってしまった。
しかし、何分もしないうちに…
『馬鹿な事を言ってないでとっとと掃除して来い!
あの家が売れたらうちの支店は今月、トップだぞ!』
吉原はあの家であった事をオブラートで包んで話したが信じてもらえず、門前払いとなった。
吉原はそれでも怯まずに、タンカを切った…。
『部長は部下の言う事が信じられないんですか?
だったらあと何人か一緒に手伝ってもらいますよ。』
手が空いている者がいれば構わないとこれだけは了解を得た。
夕方になってしまったが、窓を閉めに再びあの家へと車を走らせた…。
だが、今回は4人。
吉原・高村・伊藤・松田。
伊藤は吉原の同期で、松田はその一コ下の後輩。
向かう車の中はあの家であった事をじっくりと話をしていた。
すると伊藤が一言…。
『望月がいつか言ってたなぁ…。あの家には関わるなって…。それを言った次の日だよ…、行方不明になったのは。まっ、俺は信じてねぇ〜けどな』
それを聞いて他の者はビビっていた。
そうこうしている間にあの家に近づいて来た。
家に着くと近所の人の通報は本当だったんだと認めざるおえない風貌に吉原と高村は唖然とした…。
これでもか!と言いたいかのように窓が全開である。
『マジかよ…。全開だ。』
掃除は明日にして取り敢えず窓と雨戸を閉めようという段取りとなった。
広い一階は吉原と高村…二階は伊藤と松田が組む。
『玄関のドアは開けといて、灯りも付けとくな…。とっとと終わらせて帰ぇんべ…。』
そして一斉に始めた。
さすがに吉原・高村ペアは二度目とあり、早く終わりに近づいていた。
終了した吉原と高村は玄関で二人が終わるのを待っていた。
『あまりにも遅くないですか?』
『んん…。オーイ!こっちは終わったぞぉ。
伊藤ぉ!返事しろぉ〜い!』
返事が無い…。
そのうえ、音がしない事に気がついた。
二人の名前を叫びながら、吉原と高村は二階へと駆け上がった。
奥に行くと窓も雨戸も閉まっている為、真っ暗だ…。
懐中電灯をかざしながら、二人の名前を呼び続けた。
『奥の部屋…。何で灯りがついたんだ?』
ゆっくりと部屋を覗くとそこには伊藤が仰向けに倒れていた。
『伊藤!大丈夫かぁ!松田は?松田は何処に行ったんだぁ』
伊藤は目を見開いたまま、泡を吹いて気絶していた。
その時だった…。
ドア越しに誰かが覗いているのが見えた。
吉原と高村は声も出せないくらいの恐怖を感じるのだった…。
そこには……、
ニコニコしながらも殺気立った白い顔をした女の子の姿があった…。
そして、笑いながらこう言う…。
『パパがね…殺すって…。ママがね…許さないって…。』
キャッキャッしながらそう言って消えた。
吉原は怖がりながらもドアを大きく開けた…。
開けた事を後悔した…。
這いずりながら立ち去る女とその横をスキップしながらくるくる回る女の子を見える…。
這いずっている女は後ろを振り返ると、吉原をジッと上目遣いに睨み付けた…。
それを見た吉原は心臓が止まりそうになりながらも、こう思った…。
『俺…殺されるかも。』
女が這いずっている時の音は昼間に聞いた音だった。
カリカリ…カリカリ…。
…つづく
怖い話投稿:ホラーテラー 珠唸童子さん
作者怖話