「爺ちゃん、婆ちゃん…先に逝きます」
無数に並んだ建物。ネオンが光り、夜でもこの街は明るい。何だかそれを見ていると妙にいつも心が穏やかになる。
…俺はそのまま屋上から飛び降りた。
目が覚めると、どこか知らない部屋の中に居た。薄暗い室内に黒色の壁。殺風景でカレンダーなど何もない。
俺以外にも5、6人ほど他に人が居たがみんな無表情。ぼんやりと立っていたり体操座りしたまま床を見つめたり、横になっている者も居た。
「あの…」
ここが、どこなのか知りたい。さっきからずっとお腹を撫でてうろうろと歩き回っている、自分と同じ高校生くらいの女の子に声をかけてみた。
「…そう、…ああ…うんうん」
でもずっとお腹を撫でながら、こちらをみようともしない。
腕を軽く掴んでみると
『妊婦。電車に身を投げ死亡』
その単語が頭に浮かび一瞬ゾッとして手を離した。ここはきっと死後の世界だろう。なんとなく今ので悟った。
想像と違う…花畑でもなく川もない。閻魔様もいない。自殺者は特別なカテゴリーなのかも。
そう考えていると、ゆっくり音を立てて扉が開いた。外から白衣を着たまだ若い医者が微笑しながら入ってきた。
「いらっしゃい。これから君たちをカウンセリングしていくから、一列に並んでね」
…死んだのに、何故?意味が分からない。
周りの人は無表情に、ただ急かされるとそのままゾロゾロと並んだ。
前から順々に別室に案内されている。そのまま戻ってこない。とうとう俺の番がやってきた。
「どうぞ、こちらに」
案内されて入った部屋な、綺麗に掃除されてライトも明るい。中心にあるテーブルの上には花をさした花瓶まで飾られている。
「えっと、じゃあこれからどうしたいかな?」
「どうしたい…って、もう俺…」
「ああ、死んだ後…これからさ。希望として」
何なんだ…どうこうなるものでもないだろ。
「…とにかく眠りたいです。永遠に。若しくは無に返りたい」
医者は、カルテにペンを走らせていた。
「大体君みたいな事言うのが一番多いね。あとは天国に行きたい、もっと良い人生が歩める人間に生まれ変わりたい…とか」
黙って話を聞いていた。
「まぁ…無理なんだけどね」
「地獄に行くんですか?俺たち」
「まぁ、平たく言えばそう」
目の前が真っ白になった。
「カウンセリングして、完璧な状態になったら地獄に出す。特殊なケースのみね」
気が狂いそうになる。
「まぁ、しばらくここに君はいる訳だから。すぐって話じゃないから安心して」
あとの方の医者の話は良く覚えてない。
続きます
怖い話投稿:ホラーテラー 携帯中毒さん
作者怖話