ここから、別視点です。あと5話以内で終わります。
「…ん、今日は何しようかな?」
私はお腹を撫でる。昨日干したての布団で今日は起きた。可愛い可愛い私の子供…
「…っぁあ」
ほら声も聞こえる。しばらくすると看護婦さんがやってきて3人で病院内を散歩した。
私が自殺して、ここに来てからもうどれくらいになるだろう。初めは暗い部屋に入れられて、その後先生に会ってこの綺麗な別室に連れて行かれ、ご飯を食べたり本を読んだり比較的穏やかな日を過ごしている。
私は死んでるから老いることはなく美しいままだし、子供も小さいままいつも私と共にこうやっている。
生前は色々悩んでたけど、ここにいる人たちはみんな優しいし、カウンセラーの先生も親身になって聞いてくれる。私は…今とても穏やかな生活を送っている。
「…?」
何だろう。今日はいつもとお散歩ルートが違う。
…嫌な予感がする。分からないけど一気に鳥肌が立つ。
「…あのね、看護婦さん」
「…ん?」
「あの…」
「…ん?」
「…どこに行くの?」
「…ん?」
様子が絶対変だ。
ガタガタ震えが来る。そのまま看護婦さんが扉を開けると、大きな門が広がっていた。
「おめでとう。退院だよ。桜ちゃん」
どこからか先生がやって来て微笑しながら手を叩いてる。はいっとガーベラの花束を私にくれた。でも私は呆然としている。
「…私…私」
そのまま看護婦さんにずるずると連れていかれ、門の前に立たされると背中を軽く押された。
「ぃやぁああああああああああ!!」
門の中に入ってしまい、振り返って戻ろうとするが、入口が閉まっている。
「開けて下さい!…開けて下さい!」
ガンガンと扉を叩いていると、背中を捕まれた。振り返ると暗闇の中から真っ白な手が現れた。どこから生えてきてるかきているか分からない、長い長い真っ白な手。
「…あ」
そのまま私の腹に向かって手を伸ばされると、止める間もなく腹に腕を突き刺された。
「ああああ!!!?」
何故か意識はある。そのまま手は中にいた胎児…私の赤ちゃんを奪っていった。
私の赤ちゃん…こんな外見だったんだ。可愛い可愛い…目も開いてない。
…そのまま握りつぶされた。
「やぁあああああ!!」
手は消えた。ぽっかり空いた穴。必死に赤ちゃんを探すと何かに触れた。
「…ガーベラ」
先程貰った花束をお腹の中に入れた。
ああ…落ち着く…
再び、手が伸びてきて腹に手を捩じ込み奪っていった。
黄色くひらひらと舞っていく。私のお腹から…これ以上奪わないで欲しいのに。何で?何で?私の赤ちゃんはどこに行ったの?
「ああ…ああああ!!」
その様子を聞き、医者は溜め息をついた。
「生前はお腹にいる、将来ある我が子も巻き添えにして、自殺したのに…こうなる事覚悟してなかったのかな」
そのまま次の患者の元に向かった。
怖い話投稿:ホラーテラー 携帯中毒さん
作者怖話