実話です。
読みにくいかもしれませんが、よろしくお願いします。
目が覚めた。
寝苦しい夜だった。
ルームシェアをしている友人は夏休みを利用して実家に帰省している。
少し寂しい気もするが、広い家で唯一エアコンがついている友人の部屋で暑い夜を快適に過ごせるのはとてもラッキーだった。
いつの間にか消えているエアコンのスイッチを入れようと、リモコンに手を伸ばそうとしたとき、僕の身体は石のように固まった。
足元からくるゾワゾワっとした感覚に、さっきまでほてっていた僕の身体は急激に熱を奪われていった。
恐る恐る足元に目をやると、そこには廊下に続く一枚のドアある。
熱を逃がすために軽く開かれたドアの下から地を這うように伸びた長い一本の真っ白な手。
その手が僕の右足の足首をしっかりと掴んでいた。
しっかりと掴まれているが、『掴まれている』とい感覚はない。
ただヒンヤリとした空気が足首に纏わり付いていた。
暗闇でもはっきりとわかるほど真っ白なその手を、僕はただじっと見つめることしかできなかった。
冷や汗が止まらない。
白い手は尚も僕の足首を掴み、離そうとはしない。
そして僕はじとっとした重たい視線に気がついた。
白い手が伸びているドアの上。
上から同じく真っ白で髪の毛のない顔が半分だけこちらを覗き込んでいた。
僕はパニックになって逃げ出そうとしたが上手く身体が動かない。人生で味わったことのない恐怖に口が情けなく震え、涙が頬をつたうのがわかった。
そして顔がゆっくりとドアの上に出てきた。
目が異常に大きく、鼻がない。
そいつはそんな僕の姿を見て嬉しそうに口を歪め笑った。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
僕は心の中で謝り、信じたこともない神様に助けを求めた。
そして、ゆっくりと僕の身体は下へ下へと引っ張られていった。
ずっ…ずっ…と布団に服が擦れる音だけが真っ暗な部屋に響く。
「たす…たすけ…」
僕は恐怖で声にならない声を絞り出したが、僕の身体はどんどんとそいつの待つドアのほうへ引きずられて行った。
僕の右足がドアと廊下の隙間に吸い込まれたとき、家中がギシギシと鳴り出し、廊下が赤?オレンジ?なんとも言えない色の光りに包まれた。
すると突然、強烈なアンモニア臭が鼻をつき、キーンという酷い耳鳴りと吐き気に襲われた。
そして僕の耳元で
「また来るから」
という声が聞こえ、そして僕は気を失った。
目が覚めると僕は何故か廊下で俯せの状態でゲロにまみれて倒れていた。
いったいあいつはなんだったんだろう…。そしてあの光りは?
今まで住んでいて怪奇現象のひとつも起こったことのない家で去年の夏に起こった謎の出来事です。
まだ同じ家に住んでいますが、今のところ何も起きてないです…。
「また来るから」
怖い話投稿:ホラーテラー まだ大学生さん
作者怖話