私は友人と映画館にいった。
「よし!今日もおもいっきり泣くわ!」
「もう!恥ずかしいからやめてよ!」
以前、この友人と行った時、友人が映画館で号泣してものすごく恥をかいた。
私たちは映画館に入るといつもきまって真ん中あたりに座る。友人が
「真ん中が一番よく泣けるのよ!」
と訳のわからないことを言うからだ。
私は正直迷惑、いや、周りにも迷惑だろう。なにせ大声で泣くのだから。
いつのまにか映画はもうクライマックスだった。ふと隣を見ると好みの若い男の人がいた。
『あぁ、なんか申し訳ない気分・・・』
これから友人の号泣によりタイプの人に迷惑をかけてしまう。
するといきなり好みの若い男の人が私に話しかけてきた。
「君のお友達、泣きそうだよ?」
私は恥ずかしがりながら
「いつものことなんです。この後号泣すると思うのでその時はすみません。」
「いいんだ。僕も慣れたよ。」
一瞬、えっ?と思ったが、きっとこの人の彼女がそうゆうタイプなのだと勝手に解釈した。
案の定、友人は号泣し始めた。すると若い男の人は私に話しかけてくれた。
そのおかげで友人と一時的に他人になれた。
映画は終わった。スクリーンにはキャストなどの知らない人たちの名前が並んでいる。
「どうもありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ。」
そう言って若い男の人は席を立った。私は友人に
「すごい泣きっぷりでしたね~」
「でしょ?でもすっきりした!あんたは?」
「あたしも今日の映画は楽しかった!」
「そう?じゃまた行きますか!」
私は大きくうなずく。友人が思い出すように言った。
「あ、そうそう、あんたあたしが号泣してるとき誰と話してたの?」
「えっ?かっこいい男の人!あたしの隣に座ってた人だよ?」
すると友人は
「あんたの隣、誰も座ってなかったよ?あまりに夢中だったみたいだから話しそびれたけど・・・」
私は誰と会話をしていたのだろう・・・
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話