そりゃあ良い事ばっかりして生きてきた訳じゃないです。
訳じゃないですけど、何も命を盗られるほどの罪は犯した覚えはないです。
駄菓子屋でお釣り誤魔化したとか、その程度です。
そんな比較的善良で一般人な僕は、某年X月X日の深夜、雪もちらつく真冬だというのに、ヒーターぶっ壊れたもんだから、仕方なく黒のアディ●スのジャージを羽織って勉強机に向かっていました。
“彼女”は現れました。
『理由は私にも分からない。でも、あなたは生きていてはいけない。だから、あなたは私が殺す』
中学生、見ようによっちゃ小学生ともとれる女の子が、漫画に出て来そうなでっかい鎌を持って、僕の布団の上に浮かんでいました。
なぜか……全裸でした。
しかし、突然出て来て「死ね」とは。
理不尽てのはこういうのを言うんでしょうよ。
とにかく、いきなりキラー宣言されても困りますし、ていうか殺される理由なんかないですし、そもそもあんた誰だよ!?
『答えることを許されていない。あなたは黙ってじっとしていればいい』
一体何なのだ、この死神娘(全裸)は。
てかさっきから聞いてれば、何か僕を殺したいらしいけど、流石に小学生に負ける気はせんぞ。
鎌持ってる手ぷるぷるしてるし。
全裸だし。
『心中覚悟で殺せと命じられた。あなたは絶対に殺す』
結局のところ、訳は分からないけど、僕は今夜この娘に殺されるそうです。
素手なら負けないでしょうが、心中とか言ってるので、きっと死神マジック的な必殺技があると見て、僕は諦めることにしました。
『潔いのは良いこと。最後に一つだけ自由を許す』
思いもよらない譲歩でした。
じゃあ見逃して!!と言おうとも思ったのですが、彼女の目からして、どうせ無理なのでしょう。
だから、僕は、黙って裸の死神娘の肩にアディ●ス黒ジャージをかけてやりました。
『……え』
ただ、目の前の女の子が寒そうにしていたから、そうしました。
そうしたら、急に彼女がそわそわし始めたのです。
表情が驚き、次に迷い、次に少し苦しそうな感じになって、最後にパァと明るくなりました。
彼女は含みのある笑顔で、
『……ごめんなさい。……ありがとう』
そう言って、消えてしまいました。
気がつくと、夜が明けていました。
怖い話投稿:ホラーテラー 彼女いない歴16年さん
作者怖話