続きです。
彼女が病院に行ったあと、私は彼女の母親に会いに行きました。
彼女は、とあるアパートの一室に住んでいました。
大家さんに事情を話、立ち会いのもと鍵を開けてもらいました。
中に入るとお香のような匂いがしました。
光が入らないように、全ての窓にカーテンが引かれていたので、昼間でしたが部屋の中は薄暗かったです。
そして、部屋の隅に彼女の母親が倒れていました。
顔は分からなくなる程ズタズタに切り裂かれ、全身のあらゆるところから中綿が見えていました。
そう、それは体長70㎝くらいの人形。
彼女はそれを母親だと思い込み介護し続けていたのです。
彼女の実際の年齢は52歳。
3ヶ月前に現在のところに転居してきました。
我々は、名前と住所を聞けば、ある程度のことは調べられます。
もちろん、彼女が27歳だという話も始めから嘘であることは分かっていましたが、あまりにも完璧に作られた彼女の世界を表現するために、彼女の言ったことをそのまま書かせていただきました。
彼女の母親は、25年前に入院先の病院で自殺していました。
子供も事故で28年前に亡くなっていました。
旦那はもしかしたら生きているかもしれませんが、出所したあと離婚をしているため消息はわかりません。
これが真実です。
彼女は自身の世界に閉じ込め、各地を転々とし、当市にやって来たようです。
母親に多額の生命保険がかけられていて、働かなくても生きてこれたことが、彼女の世界を狭める原因になっていたようです。
彼女は今も病院で入院しています。
最近は、子供が生き返ったと言って喜んでいるそうです。
あまりにもショックなことが続くと人は事実をネジ負けてしまう。
霊的な怖い話はありませんが、私はこの時、言い表せないもどかしさと恐怖を感じていました。
彼女は、今後亡くなるまで自分の世界だけを信じて生きていくのでしょう。
もし、読んでくださった方々が不快にならないのであれば、また、こういったお話をしたいと思います。
ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 相談員さん
作者怖話