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短編2
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永眠 1

その男は無宗教である。

だが、無知ではない。

とある駅に降り立ち煙草を一服。

目的地に向かう道すがら、交差点の隅で御祓いをする霊媒師らしき一行を横目にぷらぷらと歩を進める。

(無意味な事をする)

男はそう思いながらも、その先にある祠に祀られた地蔵尊に手を合わせた。

職業は「探偵」

聞こえは良いが要するに 何でも屋である。

今回はある代々続く旧家からの依頼で、依頼者の祖父をみて欲しいというものだ。

詳細については直接会って話したいという。

男は何やら妖しげな匂いを嗅ぎ付けながらも、この依頼を引き受けた。

理由は一つ、破格の報酬。

如何なる難題を突き付けられるのか。

そう思いつつも、ある種の期待感を胸に抱きながら眼前に聳え立つような門を叩く。

ほどなくして使用人らしき者に屋敷の中に通され、暫く待っていると齢八十ほどの翁が現れた。

挨拶もそこそこに話し始めたその内容に、男は苦笑する。

目の前に座する翁が依頼対象ではなく、翁の祖父が奥の部屋で横になっているので、会って次なる道へ送り出して欲しい、と言うのだ。

翁が八十とすると、その祖父は百二十~百五十といったところか。

生きていればだが。

話を聞くにつけ、道 というのは所謂「六道」の一つであるらしい事は理解できたが、翁の口から連なる教えは、自身の脳内に納まる知識に当てはまるものを探す事が出来ない程、あらゆる宗教を踏襲しているように思えた。

しかし男はこう理解した。

(なんでもアリか)

話を要約すると、本来ならば翁の父が道を付ける手筈だが不慮の事故により死亡。

その後祖父が死亡するも当時の翁はまだ若く、また密教故に決まり事も多い為今日まで放置(と言うと語弊があるが)されていたらしい。

自身の寿命が尽きつつあると悟った翁が、ある霊力に長けた男が数々の難題を解決している、という噂を聞きつけこの探偵事務所を探し当てた、大筋はそんなところか。

縁側に沿う廊下を二分程滑り襖を幾つか潜ると、想像していたよりも遥かに質素な部屋、そして寝具。

その上には、干からびた骸としか呼べないものが「置かれて」いた。

生気どころか霊気すら微塵も感じ取れず、男は翁に気付かれないよう、また苦笑した。

若干の不安を抱える表情を浮かべこちらを見守る翁。

この方はもうかなり以前に旅立っていますよ とは言えず、男は暫し思案を巡らせるしかなかった。

怖い話投稿:ホラーテラー ジロウさん  

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