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短編2
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誘拐願望

誘拐されたい。

別に家に不満があるわけじゃない。普通の親だし優しい。ご飯も与えてくれるし。

でも、昨夜読んだ漫画で美男子が女の子を誘拐して、可愛い愛してると言いながらおもちゃを与えたり、頭を撫でたり、幸せに過ごす物語があった。

と、いう訳で外に一人で誘拐されに出てみた。歩いたら誘拐されるかもしれない。

だけど悲しい事に私の家の周りは山ばかり。人がほぼいないに等しい。

森の中を歩いていると、虫ばかり。ずっと耳元で耳障りな音がなる。

夜になってしゃがみこんだまま空を見上げると、満点の星空。でも星ってありすぎると黒紙に虫が沸いたみたいに見える。気持ち悪い。ああ…ブンブン五月蝿い。

しばらくすると足音が聞こえた。ついていくと男性がロープを持って首を吊ろうとしていた。

恐怖で震えながら、目を閉じるが嫌な声やすすり泣き等聞こえる。目を再び開けるとそこに男性の姿はなかった。

怖くなって私は家に帰った。

帰ってきた娘を叱ると、この様な今日の出来事をポツリポツリと知らされた。

もう一度叱ると、ごめんなさいと言いながら項垂れていた。

ため息をつくが抱き寄せてもう寝るように促した。

呆れたと同時に驚いた。

僕は娘の本当の親じゃない。数年前デパートで迷子になっていた可愛いこの子を誘拐し、今に至る。当時僕は大学生だった。

娘は僕が教えこんだ通り本当の父親だと思っている。初めは泣いてばかりだったが、今は前の事なんて忘れてる。

わざわざ警察にバレない様こんな田舎に立てこもり、生活していたが…娘がこんな考えを起こすなんて。おまけに人に会うなんて。

買い与える漫画には注意しないといけない。

もしかしたら、心のどこかで過去の両親に会いたいと思っているのか?

「…パパ」

整理された部屋に壁には娘の写真。笑顔や泣き顔。全て部屋の中で撮影したものだ。百枚くらいある。それらに囲まれて寝息をたてる娘。

僕にはわからない。

怖い話投稿:ホラーテラー 耳からナメクジさん  

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