言葉って難しい。どれだけ丁寧に話しても思ってること全てが伝わらないことも多い。
今、回転する小さな椅子に座って、精神病院の先生を目の前にして本当にそう思う。
私は、物欲が強すぎる。
もう欲しいと思ったら絶対欲しい。バックにサイフ、髪飾りにワンピース。人気のキャラクターにお洒落なカレンダー。
でも、どれだけ願っても無理な物もある。むしろ無理な物の方が多い。
小さな頃はねだるものもオモチャくらいだから、両親に買ってもらえた。今思えば家は若干裕福な方だと思う。
でも、サイフやバックは流石に無理。悩んでいるとお母さんがこう言ってくれた。
「どうしても欲しいなら、自分で作ってみたら良いんじゃない?」
さっそく私は似ている生地を買い、バックを作ってみた。歪みまくった作品だが、私は満足した。ようやく手に入った感じがした。
それから、私はありとあらゆる物を作った。綺麗な壁掛け時計やカレンダーは自分でペイントするし、プードルが欲しかったときは、家のチワワにフワフワした綿をのりでくっつけようとした。怒られた。
段々、私は陰口を叩かれるようになった。いつも周りはガラクタばかりと。
でも私は満足。
そんなある日、先生を好きになった。先生が欲しい。
先生を作ろうとした。
家に帰ってお母さんにカツラを被せ、男らしい化粧をした。眉を太くして、目尻に濃いノーズシャドーを塗る。お父さんのブカブカのスーツを着せ、100均の度なし眼鏡をかけさせたら完成。
「…先生」
私は抱きついた。
ああ、幸せだ…
同じ男であるお父さんに頼めば良いけど、オッサンだし臭いし、美しくない。まだお母さんの方がマシ。
ご飯中もずっとその格好でいさせた。
「はい、先生あーん」「…」
ある日、授業参観にお母さんが着たときは、普通の格好だった。
私は席を立ち上がるとお母さんに、無理矢理カツラだけでも被せ
「先生が二人…」
とても喜んだ。先生が親でもあり、先生でもある。ずっと私を見てるんだよ。
先生に挟まれた私。
物凄く幸福。
私は、翌日何故かお母さんに病院に連れていかれ、この事を訴えた。
「だから、これは欲しい物を抑制させるための手段で、節約にもなるし、素晴らしい方法なんです!」
これだけ話しても通じない。変な薬ももらった。
学校も休学。私は異常じゃない。
…本当は、おかしいって分かってるんだけどね。
怖い話投稿:ホラーテラー 耳からナメクジさん
作者怖話