あれは二年前の大雨の日だった。
夜の8時頃1人、町中をブラブラしていた。
都会ということもあり、辺りは明るく、人も結構多かった。
そんな人混みの中に気味の悪い女がいた。
長い髪を振り回しながら笑っている。
何故か笑い声が聞こえない。
町中の人達は、別に気にするでもなく女の横を平気で通っていた。
不思議に思いながらも、私は目を逸らしながら女の横を通りすぎた。
通りすぎてホッとしたのだが、まさかついてきていないだろうと思い、後ろを振り返った。
いない。
良かった。
その日からその女は、毎日そこで頭を振り乱して笑っていた。
いつしかそんな状況にも慣れてきた私。
毎日女がいるのが当たり前になっていた。
私の中で名前が決まっていた。
貞子。
勿論似ているからだ。
似ていない所といえば、背が高く、体つきもガッチリしているくらい。
普段は貞子の事なんて、これっぽっちも頭の中に入っていなかった。
ある日、外は大雨で出かけるのが嫌になった私は、家でレンタルビデオを見ていた。
すると丁度12時を回ったあたりから、私が住んでいるボロアパートの私の隣の家のインターホンが鳴った。
ピンポーンピンポーン。
ピンポーン。
おかしいな、隣の五十嵐さんは確か、ここ数日いないはず。
まぁ留守だからすぐどっかに行くだろと思い、無視をしていた。
それからは、ビデオに夢中になっていた。
終わったのは深夜1時、テレビを消して寝る準備をはじめた。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン。
…まだ鳴っていた。
そんなに急用なのか。
留守をしている事を伝えようと玄関のドアを開けた。
!!!
貞子だ。
まさかの展開に私はドアを閉めてしまった。
心臓の鼓動がドンドンドンと早くなった。
ピンポーンピンポーン。
心臓がドンとはじけそうになった。
私の家のインターホンがなった。
ピンポーンピンポーン。
恐る恐るドアの穴を覗いてみる。
貞子だ…。
どうしようと思っている中、外から声が聞こえた。
『すいません、開けていただけないでしょうか。横に住んでいる五十嵐さんの携帯番号を教えて貰えないでしょうか。』
しかし私は五十嵐さんとはそんなに付き合いは無く、番号自体知らなかった。
『そうですか…』
と残念そうに私の家を後にした。
ホッとして布団に入った。
ピンポーンピンポーンピンポーン。
また貞子が五十嵐さんの家のインターホンを押し続けていた。
その以上な光景を目の当たりにし、少し怖かったが、いつの間にか眠っていた。
朝起きて、仕事の支度をして家をでた。
五十嵐さんの家の前には人間の爪がいくつも落ちていた。
頭の中に貞子が浮かんだが、これ以上考えると頭がおかしくになりそうなので、考えるのを止めた。
仕事から帰って来たら私の家の電話に留守番電話が入っていた。
ピー『あなたが五十嵐さんを隠してるんじゃないの…。』
ピー『五十嵐さんを返しなさいよ』
ピー『電話に出てください』
ピー『電話にでろ!』
私はゾっとした。
どこで私の番号を知ったのだ。
教えていないはず。
その場にへたりこんだ。
ピンポーンピンポーンピンポーン。
びくっと体が跳ねた。
『すいません。五十嵐さんまだ帰ってないでしょうか…。』
外から貞子の声が聞こえる。
私は恐怖心よりも怒りが込み上げてきた。
ドアをバンっと勢いよく開けて、知らん!と怒鳴った。
貞子は私の顔を見ながらニヤニヤしていた。
それをみた私は我を取り戻し、急いで家の中に入った。
その日は貞子も諦めて帰るたのか、それ以降なにもなかった。
その次の日、仕事から帰ってくると何故か家が開いていた。
しまった、締め忘れたと思い、急いで家に入った。
…貞子がいた。
私の家の鍵を指にぶら下げて、こちらをみて笑っていた。
私は切れまくった。
どうやって入ったかとか、今はどうだって良かった。
俺の前から消えてほしかった。
貞子は顔を素に戻し。
私を睨み一言言った。
『おかえり』
そういうと、堂々と家を出ていった。
私はすぐ警察に連絡して、来てもらい、経緯を全て話した。
これから毎日定期的に見回りをしてくれるそうだ。
それから数日は貞子は現れなかった。
ある日、私は盲腸にかかってしまって入院する事になってしまった。
貞子の事など、すでに忘れていた私。
入院1日目の夜、何もなかった…。
が。
朝看護婦さんに、あなたが寝ている間に、背の高い女性があなたの横でずっと立っていましたよ。
ゾゾゾゾっと背筋に寒気が走った。
2日目。
そんな話を聞いた私は寝ることもできずに、ただ天井を眺めていた。
そして夜8時頃。
ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタ
廊下から足音が聞こえる。
次第に部屋に近づいてくる。
貞子じゃないと自分に言い聞かした。
まして一般の人がこの時間に面会できるわけがない。
ギギとドアが開いた。
カーテン越しに背の高い女がいた。
布団をかぶる私。
カーテンが、サァと開けられる。
ヒタヒタヒタヒタヒタヒタ
布団わババッと取られた。
貞子がいた。
口が裂けていた。
目が真っ黒だった。
歯がとんがっていた。
怖すぎて妄想をみていたのかも知れない。
『あたしからニゲラれルわけがネェダロ。』
それを聞いた瞬間気絶していた。
起きたら病院のベッドから落ちていた。
警察にも来てもらったが、手掛かりがまるでなかった。
監視カメラにも写っておらず、どうしようもなかった。
それから私は精神病院へ入り、1年を過ごした。
その1年貞子は1度も現れなかった。
退院して久々に家に帰ってみた。
机の上に一枚の紙が置かれていた。
『五十嵐を見つけた。次はおまえだ。』
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話