全然、怖くないかもしれませんが私の体験を聞いて下さい。
16,7歳の頃でしょうか、海辺で白いワンピースを着た同世代と思える女の子がまっすぐに海を眺めていました。夕暮れ時だったと思います。
そして私はその彼女の隣に座って何も云わずに彼女と同じように浜辺を眺めています。
しばらくすると彼女が
「じゃあ、私もう行くね。」
とニッコリ微笑んで姿を消したのですが・・・
そんな夢を23歳になるまでに何回も見てしまったので、知らず知らずのうちに私は夢の中の彼女に恋心を抱いてしまいました。
そんな中、私は、何人もの女性からお誘いの話をすべて断ってきたのですが、一人の女性だけしつこく何回もお付き合い出来ない理由を聞かれたので正直に話したところ、変人扱いというか狂人扱いされてしまって会社の女性からは見向きもされなくなってしまいました。
第6感というのでしょうか、私は夢の中の彼女と必ず逢えるような気がしていたからです。
夢の中で彼女は言います。
「私のコト、好き?」
私は
「うん、大好きだよ。」
と返事をしました。この会話は初めてでした。いままで、何も云わなかった彼女から初めて聞かれた言葉だったからです。
補足しますがもちろん、背景は夕暮れの海辺です。
彼女はしばらく押し黙ったまま、やっとの思いで口を開いた言葉は
「いままで付き合ってくれてありがとう。キミからその言葉を聞けてうれしかったよ。」
と涙を流して私に言った言葉の真意に気付いた私は
「え?・・・もう逢えないの?」
と聞くと
「・・・寂しいけど、ゴメンね。」
と言って消えていってしまいました。
それからずっと、彼女との夢は二度と見ませんでした。私は夢の中の彼女が言った言葉はゴメンだったよなぁと思い返しながらフラれたんだ!と解った途端、失望しました。
彼女は生きていて、誰か別の男性と付き合い始めたから俺とはもう逢えないと言ったんだ。と自分に納得させました。
ようやく失恋の痛手からも解放され、落ち着きを取り戻した私のところに、姉の子供が海に行きたいというので海辺に連れて行ったのです。(海は家から30分くらいのところです。)
時刻は夕暮れ時でした。姉の子供は無邪気に波打ち際で遊んでいたのですが、当時は冬でしたので人なんかいないだろうと思っていました。
するとどこからともなく犬を散歩させていた女性が向こう側から歩いてきます。犬を放していたのですが、いきなりその犬が私をみつけるや猛スピードで突進してきて、私はその犬に顔中舐められてしまいました。
飼い主の女性が近づいてきて、ようやく顔がわかるところまできたときに私はハッとしました。
私は声にならない声をだしていたように思います。彼女は静かに佇んでいましたが、6年もの長い間、恋をし続けていた彼女です。
彼女がやっと言葉をだしました。
「・・・やっと、逢えたね。」
と涙目でニッコリ微笑んだ顔はあの時と一緒でした。
P.S.
あのとき会社で私を変人・狂人扱いした女どもを、式に呼んだら自分らのレベルを目の当たりにしたのか
「・・・綺麗なひとですね・・・」とショボショボとお酌を注ぎに来たのがつい昨日のことのようです。
今では二人の一男一女に恵まれて、将来、私たちのめぐりあいでも話してやろうか、と思っています。たぶん、信じてくれないでしょうけど・・・
怖くない話に長々、お付き合いいただきありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話