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短編2
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ピンポン

一昨年の今頃、私が体験した話を少しばかり。

春からの就職のために、賃貸アパートに住むことにした。安くもなく高くもない、会社から近いだけの普通のアパート。そこに入居してから一週間程が経った頃のことである。

『ピンポーン』

聞き覚えのある音に反応し、私は玄関に向かった。

『夜分遅くにすみません。アンケートにご協力頂けないでしょうか。』

覗き穴から見ると、スーツを着た若い男性が立っていた。訪問のノルマを達成できずにこんな時間まで頑張っているのか。私は12:00を表示する時計を見て思った。

「はい、今でますね。」

私がドアを開けようとしたそのとき、電話が鳴った。すぐに戻るとドア越し言い、電話を取った。

私は受話器をすぐに戻し、窓から家を出た。

出た直後、鍵を掛けたはずのドアが開く音がした。

『おじゃましまーす。』

何やら笑みを含んだ声が、後から聞こえた。

私はふと見てしまったのだ。電話の上にある液晶から、玄関にいる男のことを。

男はカバンから何かを取り出し、笑いながらドアノブを必死に弄っていた。カバンの中には、SM系のAVで見たことのある道具や拘束具のような物が入っていた。

さらに、男の背後に数人のしっかりとした体つきの男達。

隣人は裸足で助けを求めに来た私を見て驚いたようだった。すぐにアパートに向かってくれたが、誰も居なかったらしい。

あの男達は、何が目的だったのだろう。ドアを開けていたら、今頃私は‥。

近頃は幽霊よりも人間の方が恐ろしい、そう思えるようになった体験である。

それ以来、何事もなく過ごしている。ただ、液晶で確認する癖がついた。

最後まで読んで下さってありがとうございます。

怖い話投稿:ホラーテラー はなじるさん  

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