中編3
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幽霊ホテル

俺は7階建てのホテルの六階に住んでいる。

ホテル住まいがうらやましいか?

だが、ここは夜になるとたまに奴らが来る。

そう。

この建物は有名な幽霊ホテル。

ホテル暮らしもいい事ばかりではない。

それに上の部屋では何をやってるのか水が滴れてくる。

だが俺は器のでかい男だ。

文句なんて言わない。

例えみんなから小心者だと思われてもいいんだ。

きっと風呂に入りながら寝てしまっているのだろう。

かわいい女の子が住んでるらしいんだ。

向こうから謝ってくるのを待っているんだが、謝りに来た例しがない。

ここでのホテル住まいはもう一人いる。

同じ六階に部屋を借りて住んでるおじいちゃん。

ほとんど寝たきりらしいのだが。

ホテル住まいで寝たきりのおじいちゃん。

何だか意味深だな。

まぁ、こんなホテルだけにいろんな人がいてもしょうがない。

それにしても、今日は何だか胸騒ぎがする。

奴らが来るかもしれないな。

土曜の夜だってのに、ゆっくり休めやしないじゃないか。

支配人からは奴らが現れてまたロビーが荒らされたと愚痴を聞かされるんだろうな。

ロビーは通り道ってやつだな。

あっ、声が聞こえた。

俺の胸騒ぎが当たったんだ。

今日はやけに騒がしい。

きっとかなりの数だろう。

いつも通り俺は部屋の隅でベッドに隠れながら座り込む。

何だかいつの間にか定番になっている。

いつも通りの体育座り。

やっぱりこれに限る。

上の女の子は大丈夫かな。

でも、心配している余裕はないな。

もうすぐ奴らはここに来るはずだ。

奴らが来ない日もあるが、この部屋も通り道なんだろう。

大抵はこの部屋にも入ってくる。

それに今日はこの人数だ。

もしかすれば俺が一番恐れているタイプの奴らかもしれない。

おとなしく通り過ぎていくだけの奴らならいいのだが。

音が大きくなってきた。

俺は目をつぶり、手を足にまわす。

「おい!ほんまに出るんかいな!」

「俺、前来たとき写真に写ったぞ。」

「キャー、怖い!」

「まじか。カメラ持って来りゃよかったわ。」

「この部屋か?」

「ここはあんまりたいしたことないらしいけどな。」

「六○三号室は!?」 

「六○三号室はじいさん出るらしいな!」

「後、七○五号室の風呂場に女の子の霊が出るらしいぞ。」

「しかも黒髪でボブのかわいい女の子らしいな。」

「それなら知ってる。ネットで書き込みあったの見たわ。」

「怖い、怖い。もう帰りたいよぉ。」

「とりあえずこの部屋いいから、六○三号室いこや。」

奴らはすぐに通り過ぎていった。

物は壊されてない。

落書きもされなかった。

俺が恐れていた奴ら…。

ヤンキーではなかった。

ただの肝試しか。

ほんとに迷惑な話だ。

それにしてもやっぱり七階の女の子はかわいいのか。

いつも風呂場にいるらしいけど行っても大丈夫かな。

会ってみたいな…。

 

そう。

ここは幽霊ホテル。

俺よりも七階の女の子が有名な幽霊ホテル。 

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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