俺は7階建てのホテルの六階に住んでいる。
ホテル住まいがうらやましいか?
だが、ここは夜になるとたまに奴らが来る。
そう。
この建物は有名な幽霊ホテル。
ホテル暮らしもいい事ばかりではない。
それに上の部屋では何をやってるのか水が滴れてくる。
だが俺は器のでかい男だ。
文句なんて言わない。
例えみんなから小心者だと思われてもいいんだ。
きっと風呂に入りながら寝てしまっているのだろう。
かわいい女の子が住んでるらしいんだ。
向こうから謝ってくるのを待っているんだが、謝りに来た例しがない。
ここでのホテル住まいはもう一人いる。
同じ六階に部屋を借りて住んでるおじいちゃん。
ほとんど寝たきりらしいのだが。
ホテル住まいで寝たきりのおじいちゃん。
何だか意味深だな。
まぁ、こんなホテルだけにいろんな人がいてもしょうがない。
それにしても、今日は何だか胸騒ぎがする。
奴らが来るかもしれないな。
土曜の夜だってのに、ゆっくり休めやしないじゃないか。
支配人からは奴らが現れてまたロビーが荒らされたと愚痴を聞かされるんだろうな。
ロビーは通り道ってやつだな。
あっ、声が聞こえた。
俺の胸騒ぎが当たったんだ。
今日はやけに騒がしい。
きっとかなりの数だろう。
いつも通り俺は部屋の隅でベッドに隠れながら座り込む。
何だかいつの間にか定番になっている。
いつも通りの体育座り。
やっぱりこれに限る。
上の女の子は大丈夫かな。
でも、心配している余裕はないな。
もうすぐ奴らはここに来るはずだ。
奴らが来ない日もあるが、この部屋も通り道なんだろう。
大抵はこの部屋にも入ってくる。
それに今日はこの人数だ。
もしかすれば俺が一番恐れているタイプの奴らかもしれない。
おとなしく通り過ぎていくだけの奴らならいいのだが。
音が大きくなってきた。
俺は目をつぶり、手を足にまわす。
「おい!ほんまに出るんかいな!」
「俺、前来たとき写真に写ったぞ。」
「キャー、怖い!」
「まじか。カメラ持って来りゃよかったわ。」
「この部屋か?」
「ここはあんまりたいしたことないらしいけどな。」
「六○三号室は!?」
「六○三号室はじいさん出るらしいな!」
「後、七○五号室の風呂場に女の子の霊が出るらしいぞ。」
「しかも黒髪でボブのかわいい女の子らしいな。」
「それなら知ってる。ネットで書き込みあったの見たわ。」
「怖い、怖い。もう帰りたいよぉ。」
「とりあえずこの部屋いいから、六○三号室いこや。」
奴らはすぐに通り過ぎていった。
物は壊されてない。
落書きもされなかった。
俺が恐れていた奴ら…。
ヤンキーではなかった。
ただの肝試しか。
ほんとに迷惑な話だ。
それにしてもやっぱり七階の女の子はかわいいのか。
いつも風呂場にいるらしいけど行っても大丈夫かな。
会ってみたいな…。
そう。
ここは幽霊ホテル。
俺よりも七階の女の子が有名な幽霊ホテル。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話