俺は怖い話全般が大好きだ。
心霊スポットも県内外問わず腐る程訪れたし、少なからず霊体験もしてきた。
時にはマジで危うかった事もある。
それに幽霊とは関係ないかもしれないが、科学じゃ説明しきれないような不思議な体験も何度かしてきた。
基本オカルトが好きなので幽霊や妖怪、果ては宇宙人の類いまで信じている。
それに最近は神様もいるんじゃないかって思う。
ただ俺が唯一信じれないのが霊能者だ。
もちろん全ての霊能者を信じてないわけではない。
生まれ持って力を授かっている方もいるだろうし、想像を絶するような修行の末に力を手にした方もいるだろう。
ただ霊能者の100人に95人位は嘘っぱちだと思う。
占い師もおおかたそうだ。
一部を除いて殆どが偽物だろう。
だから俺はよく当たるって有名な占い師に相談に行く事を思いついた。
で、ネットワークビジネスの奴らの話を冷やかしで聞く感覚で、占い師も冷やかしてやろうって魂胆だ。
当たってもいない話にいちいち感動したフリをしてやろうと。
ひねくれてるね、俺。
でもまぁ好奇心には勝てないので、早速ネットやら知り合いを伝って占い師を探した。
めちゃめちゃ当たるってのを条件で。
いっそ神様として崇められているくらいのビックネームが良い。
知り合い何人かに問い合わせると5、6人がある占い師を教えてくれた。
地元では超有名な占い師で、俺の希望通り一部からは神格化されている人物らしい。
早速予約の電話をしてみた。
ここでまず俺の誤算がひとつ。
なんと予約1年待ち。
そんなに待たされるとは思ってなかった俺だったが、今更引く気にはなれず1年後に予約を入れた。
それから1年後。
ふと携帯に知らない電話番号から着信があった。
不審に思いながらも出てみると、例の占い師の弟子と名乗る人物からだった。
すっかり予約したのを忘れてた。
売れっ子占い師にもなると予約日の3日前に確認の電話までするサービスの入れようだ。
まぁおかげで助かったけど。
3日後。
俺はあるマンションの一室を訪ずれた。
ここが占いの館らしい。
部屋は2部屋あり、まずは手前の部屋に通された。
そこには他の相談者も2名いた。
2人ともいかにも信者って感じのおば様だった。
おば様2人の順番が先だったので、結局2時間待たされた。
その間ずっと部屋の小さいテレビでミヤネ屋を見てたから退屈しなかったけど。
いよいよ俺の番になり、弟子に奥の部屋に通された。
俺は占い師の対面にドンッとあぐらをかいて座った。
雰囲気に飲まれないように、占い師を正面から直視してやった。
占い師はどうだろう?
年の頃は60歳そこそこの白髪のあばあちゃんだった。
装束か袈裟みたいなのを想像してたが、意外にもパリッとしたパンツスーツ姿だった。
しかし首や手首にはどデカい数珠と、指にはいやらしいくらい大きい宝石のついた指輪をしていた。
まず紙とペンを渡され名前と生年月日を書くように言われた。
言われた通り、俺は紙いっぱいに名前と生年月日を記入した。
それを占い師に渡すと、険しい顔をして見つめる。
そして、相談内容は?と問いかけてきた。
俺は適当に人生全般と仕事と恋愛について聞きたいと伝えた。
細かい内容は忘れたが、占い師の答えはこんな感じだ。
人生全般
あなたは家庭運に恵まれていて、晩年までお金には困らない。
そして両親があなたをサポートしてくれるから基本的には不自由なく暮らせる。
俺は笑いそうになったが、必至で堪えた。
何故ならうちの両親は離婚しそうなぐらい不仲だし、安月給の為、毎月毎月カツカツだったからだ。
仕事運
あなたは今の仕事はあまり向かない。半年後には転職を考えるだろう。向いているのは芸術家など。
またまた俺は笑いを堪えた。
なんせ俺は3ヶ月前に既に転職済みで、この仕事がやりたくて必死で勉強したし、確かに安月給だけどやり甲斐を感じている。
芸術家に関してだけど、昔から美術や音楽はてんでダメで、万が一その職に就いたとしても、どうやって食ってくんだ。
恋愛運
今は1人で寂しいかもしれないが、焦る必要はない。あと数年で良い縁がある。その人は家庭的な人であなたを支えてくれるだろう。
これには笑いを堪えきれず、変な表情になってたと思う。
だって今、彼女いるし。ましてや全く寂しくなんかない。しかも俺は家庭的な人より、いつまでも女としていてくれる人が好みだ。
所詮売れっ子でも偽物は偽物かと、ある意味満足のいく鑑定結果だった。
俺は封筒に入れた謝礼の万札を静かに差し出し、席を立った。
そして踵を返し、ドアの方を向いて満面の笑みをこぼした。
そのまま部屋を出ようとドアノブに手を掛けた時だった。
「待ちなさい。」
そう呼び止められ、振り返ると占い師は何とも言えない表情をしてこう言った。
「今の鑑定は全部嘘です。あなたの両親の事や、転職、恋人。全てわかっていますよ。こんな事をしていると、いい死に方しませんよ。」
全身に鳥肌が立った。
全て見抜かれていた。
俺は逃げるように部屋を出た。
本物っているんですね。
後日談だか、今俺はこの占い師を
「先生」
と呼んで慕っています。
完
怖い話投稿:ホラーテラー 紅天狗さん
作者怖話