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中編5
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御神籤

運のいい人、運の悪い人。

あなたは自分はどっちの方だと思います?

商店街の福引の券を何枚も集めて一等の商品を狙ったり、

一等が出たと言われる宝くじ売り場まで足を運んだり、

競馬、パチンコ、さまざまな娯楽を楽しんでいます?

賭け事はとても危険なもの、一歩間違えば身の破滅。

そんな事、分かっているけれど止められないもの、それが賭け事。

一攫千金の夢は近くに見えてとても遠い。

蜃気楼にだまされて何枚ものお札が消えてききます。

まさに現代の恐怖、とでもいったところでしょうか。

運のいい人はまだよいでしょうが、悪い人にとっては、本当の怪談でしょうね。

けれど、運のいい悪いは別に賭け事だけではありませんよね。

たとえば出かけようとしたら雨が降ったり、それでも出かければサイフを忘れる。

不幸、それは誰にでも降りかかるもの。

けれど、運命とは残酷なもので時には一人の人間に取り付く悪夢でもあります。

振り返ってみたら、不幸という名の死神が笑っているかもしれませんよ。

振り返る勇気が、あればの話ですけれどね。

さて、あなたは運のいい人、運の悪い人、どっちの方だと思います?

自分で言ってみても、私は信じませんけれど。

やはり、実際に試して見なければ分かりませんよね、実際に。

運試し、たとえばロシアンルーレット?それともギャンブル?

それよりももっと簡単な方法があるでしょう?

神社の御神籤、それよ。

大凶、凶、大吉、小吉、吉、中凶、末吉、中吉。

格付けされた御神籤があなたの運命を即座に示してくれる。

もちろん、二度引くなんて事、しませんよね。

あなたは御神籤は好きですか?

インターネットで御神籤とか占いとか、すぐやってしまうほうですか?

大吉などが出た日には、周りの人に自慢しますか?

きっとその日はずっといい気分でいれるでしょうね。

けど、周囲の人はどう思っているのでしょう。

あなたの態度に腹を立てたり、逆に不幸になれ、など思われていませんか?

その思いは実際に力となって、あなたを本当に不幸にする事さえ可能なのですよ。

そう、大吉だからと言ってはしゃいでは、いけません。

特に、本当に神社などで御神籤を引いたときには・・。

これは都内のとある神社で囁かれてる噂話。本当かどうかは分からない。

けれど私は本当の事だと信じている。

信じさせるほどの生々しさが、この噂にはあるのよ。

その神社には昔から御神籤を売っている棚のようなものが設置されているの。

棚の上には振ると運勢が書かれた紙が出てくる小箱が置かれていて、

すぐ横に100円玉を入れる古ぼけた賽銭箱。

見た目だけなら、本当に運勢が当たりそうな、そんな御神籤なの。

その神社の前は近くにある高校の帰り道としても利用されていて、

夕方になると神社の前を制服姿の高校生達が列を成して歩くの。

好奇心旺盛な彼らは、そういう少し怖い感じのする神社をほおっておかない、

時折境内の中に入っては一円玉などを賽銭箱に遠くからほおり投げて遊んだり、

単純な遊びをしてふざけあったりしていたの。

「おい、これ御神籤じゃん?」

その棚に気づいたのは喜田という男子生徒だった。

彼の声にふざけて遊んでいた友人達が数人集まってきた。

彼らは古ぼけた賽銭箱と御神籤の箱を見つけて、好奇心がさらに刺激されたの。

やってみたい、けれど100円。

100円では今ではジュースも買えないご時世だけれど、それでももったいない。

考えた結果、ジャンケンで負けた一人が自腹で御神籤をすることになったの。

負けたのは喜田君、思えばこの時から運が悪かったのかもしれない。

彼は少し汚れた100円玉を賽銭箱の中に投げ込むと、

古ぼけた御神籤の箱を持ち上げた。カサカサ、カサカサと中で紙がこすれる音。

暫く振ると箱に開いた丸い穴から黄色くなった紙が顔を出したの。

喜田君はそれを開いた。

「・・・大凶だ」

黄色い紙には大きな字で大凶と書かれていたの。真っ赤な文字で。

その下に小さく、遮断機に気をつけろ、と付け加えられていて喜田君は不機嫌になって

紙を賽銭箱の中に投げ入れてしまった。

友人達は気にするなと言いながら、大凶をひいた彼を笑っていたの。

みんな、そういう目が出る事を願っていたから、笑い物にしたかったの。

「だいたい、こんなの一種の暗示だろ?

悪い事が起きると思うから悪い事が起きるんだ」

喜田君はみんなにそう言いながら、神社を後にした。

「遮断機にしたって、気にすればするほど何か起きるんだ

それにささいな事なんていつだって起きてる、それが遮断機でちょっと起きるだけで

御神籤が当たったとかなんだとかこじつけるんだ」

「そんな事言ってるけどよ、本当に当たるかもしれないぜ?」

「言えてる言えてる!気をつけろよ」

友人達はひやかしながら、喜田君は否定しながら帰り道の踏み切りについたの。

遮断機は上にあがっていて、電車は当分に着そうになかった。

喜田君は後ろ向きに歩きながら、

「だから、気にしすぎるのがいけないんだ、お前らだって…」

と踏み切りの中に一歩、足を踏み入れたの。

一瞬、友人達は何が起きたのか分からなかった。

目の前を歩いていた喜田くんの頭がミカンがつぶれたようにひしゃげて、

ぱっと鮮血が友人達に浴びせられたわ。

めきめきめき、って喜田君は足元から崩れ落ちて、彼の体は線路上に投げ出された。

同時に絶叫と悲鳴が踏み切りの警告音のように響いたわ。

友人達は気づいた。上がっていた遮断機が突然、喜田君の頭の上に落下してきたのを。

ものすごい勢いで落下した遮断機は、喜田君の頭を潰して、更には彼の体を押しつぶした。

めきめきという音は、彼の体中の骨が砕ける音だったのね。

しかも、悲鳴をあげている彼らの前に聞き覚えのある警告音が届いた。

電車が、着ちゃったのよ。

ブレーキは間に合わずに、喜田君の体の上を通過していったわ。

鮮血も、彼の体の塊も、すべてがめちゃめちゃになった。

その時、友人達は見たそうよ。

通り過ぎる電車の向こうで、ケタケタと笑っている老人達を。

数十人の腰を曲げた老人達が、杖を片手に顔中のシワを更に押し曲げて、

ケタケタケタって笑っていたっていうの。

鮮血にまみれた、友人達を嘲笑うようにね。

それからも、その神社にはまだ御神籤は残ってる。

この噂が広がってから、誰も近づこうともしないらしいけれど。

でもね、きっとこの神社にかぎったことではないと思うの。

大きな力をもった御神籤はきっといろんな所にある。

それを引けば、きっと同じ事が起きると思うの。

でもね、問題はその御神籤でなにを引くか、ということよ。

大吉を引くことが出来れば、きっと凄い事がおきるはず。

近くに神社があるならば、一度足を運んで見たらどうかしら?

最高の運試しが出来るわよ。

老人達が、あなたに幸運を与えてくれる事を願うわ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名ARGENTINOさん  

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