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中編5
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罪憑き

私は都会っ子でしたが中学に上がると同時に田舎の

お婆ちゃんの所へ預けられる事になりました。

両親が仕事で忙しく余り家に帰って来れないという事から

一人で家に置いておくのは危ないからでした。

お婆ちゃんは優しく、一人っ子の私を

快く迎えいれてくれました。

が、電波もあまり入らないのか

携帯やインターネットもなく周りに

知ってる子も居ない現状に

私は退屈していました。

転校して3日目くらいで地元の

友達ができました。雪と言って

地元では珍しく田舎臭くない女の子でした。

多分浮いていた私と雪はすぐ仲良くなり、

毎日一緒に遊んで過ごしました。

中2の夏、私と雪は近所の男の子達と一緒に

肝試しをしよう!と言う話になって

いつも遊んでいる場所なので全く怖くないけど

理由をつけて夜に歩けるというのが新鮮で

当時はワクワクしていました。

場所は、村からほんの少し自転車で上った所にある神社へ行き

50円を入れておみくじを引く、という道のりでした。

雪と私、男の子達、という風に別れて

順番に取ってくる事になりました。

最初に行ったのは男の子達で、ものの30分程で戻って着ました。

ワクワクしながら手をつないで怖いねーとか言いながら

夜道を懐中電灯で照らしながら行きました。

しばらく行くと神社に着き、おみくじを買いました。

私は小吉、雪は大吉でした。

そのときの雪の笑顔はとても可愛く、

女である私さえドキッとしてしまいました。

帰り道、すぐに戻るのはもったいない・・と雪が言うので

途中にあるお墓とお寺に行ってみようか!とクスクス笑いながら

女の子同士で小走りで行きました。

当たり前の様に何にもなく、そりゃそうだよねーって思いながら

うろうろしていました。赤い木屑がそこらに落ちていて

クリスマスのCMにでるみたいな木の木屑かな?と思って

見回しましたがそんなものはありませんでした。

靴が汚れた事に苛立って、傍にあった

薄汚れた大きい石ころを蹴って帰りました。

道の途中で雪が黙ってしまったので、さすがに

お墓は怖かったのかな?と思いました。

集合場所に着き、雪は何も言わず走って帰っていきました。

男の子達も私も唖然とし、喧嘩したのか?なんて聞かれて

してないよ!と首を振りました。

次の日も、その次の日も、雪は学校に来ませんでした。

風邪だと聞かされたのでお見舞いに行ったのですが、

お手伝いさんが出てうつるといけないから・・と追い返されました。

ある日お婆ちゃんが電話で、○○さん(雪の苗字)所が罪憑きに?

と言ってるのが聞こえました。

一時間程続いた電話を切ったお婆ちゃんにすぐに駆け寄り

雪んとこどうかしたの?病気?って言ったんだけど

なんでもないよ?とはぐらかされました。

3年に上がった頃、雪のお父さんに呼ばれて

お婆ちゃんと一緒に雪の大きなお屋敷に行きました。

雪に逢ってあげて、その時(肝試しのとき)の話聞かせてくれないか

といわれました。なんかあったのか?とおびえながらも

憔悴しきった声に、ハイ・・とこたえました。

お婆ちゃんも優しく笑いながら頷きました。

話を聞くと、肝試しの夜帰ってきてから部屋に閉じこもり

最終的には屋根裏部屋へ、暗い光の入ってこない場所に

どんどん閉じこもっていったと聞きました。

彼女が一心不乱に呟く言葉が、

見られてる見られてる見られてる見られてる見られてる

だけらしいのです。何を聞いても聞かなくても。

何に?誰に?何度聞いても同じらしく、終いには

髪を掻き毟ったり、目を突こうとしたり、奇行に走ろうとするようにまで

なったので都会の病院に移る、と決めたらしいのです。

だから最後かもしれないから、会ってあげて。といわれ

彼女の元へ行きました。

彼女の綺麗な長い髪はボサボサに、目も口も肌も

あの頃の彼女の面影はなかったのです。

私をちらりと見ると彼女は私の肩を掴み、

お前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のお前のおま

それのみを言いながら迫ってくる彼女が恐ろしくなり

叫びながら助けを求めました。

隣に居た、彼女の父がすぐ来て

彼女を引き剥がして言いました。

やっぱりお前のせいか

私を見下ろし、さっきと同じ人には思えませんでした。

お婆ちゃんも上がってきて、その時にはさっきの

心優しい彼女のお父さんに戻っていました。

真っ青になった私を見たお婆ちゃんは

もう帰ろう?と優しく一言かけてくれて

立たせてくれて手を繋いで、帰ります娘さんの回復を祈ります

とお婆ちゃんが言い玄関に向おうとしたとき

彼女のお父さんに腕をつかまれ痛っと思いましたが

にっこり笑って これ、お守り。もって帰って肌身離しちゃだめだよ。

と小さな赤い袋を受けとり、足早に帰りました。

家についた瞬間、お婆ちゃんがお守りを頂戴といって

渡すと、布きりバサミを取り出してチョキンとお守りの上の

頑丈な縛り口を切りました。

ハラハラと黒いものがお婆ちゃんの手から落ちていきました。

人の髪の毛でした。

怖くて泣き出しそうな私に、お婆ちゃんは

これはね、人に憑いた世にあるべきじゃない者(罪憑き)を

他にうつす時の呪いなんだよ。

多分あの子のお父さんはね、いけないってわかっていたけど

悲しくて悲しくてどうしようもなかったんだよ。

これを焼いた灰を神社の坊さんいるでしょ?あのおじさんに

お婆ちゃんがちゃんと渡して言っとくから、大丈夫だよ。

ゆっくり笑ったお婆ちゃんは、次の日山の上の神社にでかけました。

それから半年くらいして、お婆ちゃんは亡くなりました。

転んだときの、足の骨折と心臓発作からでした。

だいぶ年をとっていたから、よくある事なんだよ。と、

先生と両親は私が居なかった事を責めませんでした。

私は、都会の高校を受けまた夜は一人で

冷たいご飯を食べるようになりました。

時々夢に見てしまうのです。

恨めしそうに、でも悲しそうに立つ雪と

雪の後ろに居る赤い大きな女を。

ただの夢だ、絶対と思いつつも少しずつあの日の

事を思い出してしまうのです。

私が蹴った汚い古い大きな石ころの傍に

落ちていた赤い木屑のようなものは

マニキュアを塗った爪のようだった、と。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名JKさん  

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