色々な人たちの体験談・創作を、いつも楽しく(?)読ませてもらっています。
触発されたわけではありませんが、オレもひとつ、投稿させて頂きます。
怖い話好きなくせにまだ心霊経験をしたことがない。
この話も幽霊等は出てきません。オレが体験した唯一の不思議な出来事です。
ある年の夏、一人旅の好きな俺は沖縄にいた。
それまでも色々な場所を旅行してきたわけだが、どの地に訪れても必ずすることがひとつある。
その街の図書館に寄ることだ。
図書館のどこに惹かれるのかうまく説明できないが、とにかく別の街の図書館でじっと本を読んでいるとなんとなく、不思議な気持ちになるのだ。
沖縄でもひとしきり海で泳いだあと、人に場所を聞き図書館へ。
あまりよく覚えていないが、市役所だか、役場だかの四階くらいにあったと思う。
入り口から入って奥に長い長方形の部屋で、入り口のすぐ左手にカウンターがある。
さほど広い図書館ではない。小学校の図書室をイメージしていただくといいかもしれない。
とにかく俺はそこで本を読み始めた。
他の来館者は十人近くだったと思う。後は図書館の人が数名。
まあ、見渡せばわかる人数だった。
時々聞こえる小声での話声や、ページをめくる音がここちよかった。
読みはじめて一時間くらい経った時だろうか。
俺はなんとなく本から顔を上げた。
そしてまた顔を落とす。
その瞬間、違和感を感じた。
何かわからないが、とにかく妙なのだ。
再度顔を上げ、辺りを見渡す。
誰もいないのだ。
奥に事務所らしき所へ通じるガラスの扉があるのだが、そこに動いていた人影もなくなっていた。
館内に物音ひとつしない。
立ったまま数分呆けていたのだが(怖い、という感覚はまったくなかった。ただうまく頭の中がまわっていなかったんだと思う)、とりあえずまた本を読むことにした。
今考えれば色々確かめればよかったかなぁ
今考えれば結構不思議な事だと思うのに、なぜかあの時は全然そんな感覚がなかった。
また本を読み直してから何分経っただろうか。
ふと顔を上げたとき、風景はもとに戻っていた。
カウンター内にはお姉さんがいたし、前のテーブルではじいさんが眠そうに新聞を読んでいる。
他人にこの話をすると、決まって、
「お前本に集中してたんじゃないのか?他の人のことが気にならないくらい」
みたいなことを言われる。
俺も話を聞く立場だったらそう言うだろう。
まあ幽霊も出てこないし、怖い人間も出てこないしな。
ただ俺の中ではかなり不思議な体験だった。
人がいた時といなくなった時の境目が無かったのだ。
やっぱりあの時色々確かめておけばよかったかなぁ。奥の事務所に入ってみる、とか。
最後までこの下手くそに付き合ってくださってありがとうございました。
また皆さんの話を楽しく聞かせて頂きます。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話