俺が小学3年生の頃だった。
『
「ただいま!」
今日で一学期も終わり、楽しい楽しい夏休みがスタート!!
テンション上がりまくってた俺は、母さんが作ってくれた焼きそばとおにぎりを食べて
誰と遊ぶかも決めずに外に遊びに行こうとしていた。
弟「にいちゃん、遊びに行くと?」
これは、俺の弟。四つ下で、もうね、誰が見てもかわいい奴でね、メロメロだった。
今でも弟に甘いのは秘密だ。
「どげんした~?おいと一緒に遊ぶ?」
弟「うん!にいちゃんがよかなら遊ぶ!」
かわいい奴め!遊んでやるに決まってるじゃないか!
「よかよ~。なんばして遊ぶ?」
弟「今さぁ、自転車ば練習しよっけん、手伝ってくれん?」
向上心の強い奴め!お前は大物になるぜ!
「よし!分かった!練習ば手伝ってやろう!」
弟「ありがと!行こうぜ~!」
急いで着替えて(制服制の学校だった)、外に出た。
外は快晴。青く広がる空と、磯の香り。
皆さんにも覚えがあるのではないだろうか、
あの、夏休みに入って間もなくの解放感を。
弟「もう補助輪は外したけん、にいちゃん後ろばもっとってくれん?」
「Ok!わかった!」
弟はヨロヨロしながらも、足を地面から放してこぎ出した。
「おお!よか調子ぞ~!男は度胸!こいでこいでこぎまくれ!!」
弟「よ~し!にいちゃん!一回手ば放して!男はオキョウ(?)だぁ!」
「よ~し!!わかった!放すぞ~!行け行k・・・・あ、アイツだ。」
』
弟「乗れた!!!」
一学期の通知表をもらい、去年よりよかったな~、母ちゃんに褒められるかな~、
とか考えながら、家に向かっていると、弟がヨロヨロ自転車に乗りながら現れた。
あいつ、自転車乗れるようになったんだな。
弟「・・・・・にいちゃん?」
俺「お~ただいま!お前、自転車乗れるようになったんか!?」
弟「え・・・うん・・・・え????」
俺「どげんした?つか、誰かに手伝ってもらったん?」
弟「え・・・やけん・・・え?にいちゃんに・・・?」
俺「は?」
弟「え、だってほら・・・あそこに・・・。」
弟が指差した先に、
俺がいた。
ソイツは、こっちを見ているのか、いや、にらんでいるのか。
俺だった。確かに俺だ。
あっけにとられ、しばし呆然としていると、そいつはニコッなのか、ニヤッなのか
一笑して、フッと煙のように消えた。
家に帰ると、かあちゃんまで「????」という顔をして
母「あんた、さっき着替えんやったと???」
この後も、かみ合わない話を永延とされた。
俺は、焼きそばも食ってないし、ランドセルも下していない。
実際、焼きそばは手をつけられずにテーブルに乗っている。
弟は‘誰’と、自転車に乗る練習をしたのだろうか。
もう少したってから‘ドッペルゲンガー’なるものを知った。
なんでもドッペルゲンガーに会うと、死ぬ、とか、寿命が縮む、とか
よくない影響があるらしい。
今年、19歳になったが、もちろん死んでないし、今のところ影響はない。
しかし、寿命が縮む・・・せめて、曾孫の顔を見て死にたい。
ドッペルゲンガーなのかどうかもわからないが、弟を可愛がってくれたので、
憎む必要もないし、怖がる必要もないのだろうが、やっぱり怖い。
その時のことを弟に聞くと
弟「あぁ~なんかね、うろ覚えばってん、いつもよりやさしいなって思った気がする。笑」
俺の愛情表現はドッペルゲンガー以下か!と突っ込みを入れながら、今度ほしがってた財布を誕生日に買ってやろう、と
なんとも兄馬鹿なことを考えていたのは秘密だ。
俺は幽霊を見ることがある。しかし、それとは別の‘何か’をみたのはこれが初めてだった。
過去に神様っぽいものとの体験もしているが、それはまた別の話。
こうなれば妖怪や鬼など、空想上のモノと思われている奴らもいるんじゃないか、と
俺のオカルト好きを加速させた話でした。
怖い話投稿:ホラーテラー 罰天さん
作者怖話