僕が中学生の時に体験した話。
ホラーだとか、そういった類いとはちょっと違うかもしれませんが、投稿させて頂きます。
今から8年ほど前、僕は○児島県の○田町という所に住んでいた。(今は数年前の市町村合併で名前が変わってしまったが)
そこは、映画「もの○け姫」に出てくる様な自然が豊富な地区で、町と言うよりは村に近かった。
ザックリ説明すると
僕が住んでいたのは、開拓によって拓けられた山の頂上付近で、そこ以外は「手付かずの自然の山」だ。
山を下れば市街地があるのだが、その山を下るのも車で30分弱は掛かる様な、そんな場所だった。
中学3年の夏の夜、ヒマだった僕は、自分も所属する野球部の友人SとOの3人で、同じく野球部のKの家へ遊びに行く事にした。
Kの家は僕らと違い、山の頂上付近ではなく
山の中腹、つまり自然の山の中に、ぽつんとある。
彼の家に行くには、2つのルートがあった。
1つは、途中までは車でも行ける、ある程度舗装された道のルート。
もう1つは、本当に地元の人しか知らないような、ガチの森の中を突っ切る道のルート。
僕らの住む住宅地から徒歩で行けば、前者は1時間、後者は40分の時間が掛かる。
僕らは、早く着くという理由で、後者の道で行くことにした。
ガチの山の森の中を歩くとは言え、3人とも日中は何度か通った事がある。
「何度か通った道で迷うことはないし、3人も居るから大丈夫さ」
と思い、その時は特に気にせず、
今でもしっかり覚えている。午前1:55に、森の中へ入って行った。
しかし、すぐに後悔した。
夜の森は、思ってた以上に暗く、そして静かである。
外灯なんかある訳もなく、文字通り「手探り」に近い状況だった。
3人ともが
「やっぱり普通の道で行かね?」
と言いたかったはずだ。
しかし中学3年生、そんなヒヨった事を言うのは気が引ける。
「マジ暗れーし」
「ってか腹減った」
「少し寒くね?」
みたいな、「オレはビビってませんよ」発言をしながら、それぞれ歩いていた。
ずっと喋り続けてたのを記憶している。
それが精一杯の強がりだったと、今では思う。笑
歩いている間、ずっと違和感があった。
気のせいかも知れないが、何だかずっと、誰かに見られている様な、知らない場所を歩いている様な。違和感が。
結局その違和感はずっと続いたままだった。
後から確認した事だが、やはり同じくSとOも感じていたらしい。
「何が、とはハッキリ言えないが、何かしらの違和感」を。
しかし程なくして、僕ら3人はKの家に着いた。
安堵からか、更に口数が増えたのを覚えている。
実はアポなしで行っていたのだが、Kは「おー、こんな時間によく来たな。いらっしゃい。」的な軽いノリで、すぐに家に上げてくれた。
Kの家は昔ながらの作りで、敷地内の母屋から離れた場所に物置小屋がある。
その物置小屋を改装してKは自分の部屋として使っていた為、夜の遅くに突然お邪魔しても母屋で生活してる親御さんには迷惑が掛からず大丈夫(?)だった。
Kの部屋に上げてもらい、腰を下ろそうとした時、何の気なしに部屋の壁掛け時計に目をやった。
AM2:10
……あれ?
僕「なぁK、この時計って時間遅れてる?」
K「? いや、合ってるはずだけど?」
僕は自分で持っていた時計にも目をやった。
どうやらKの言ってることは間違っていないみたいだ。
……おかしい。
僕の質問を耳にし、それぞれ時計を見たSとOも、一瞬でその違和感を理解したようだ。
15分しか経っていない。
日中でさえ普通40分は掛かる道を、例え早足で歩いたとしても30分は掛かる距離を、15分で来た?
只でさえ視界が悪く、歩きづらかった。
道は一本道で、歩いてて奇跡的なショートカットなんて事は、まず有り得ない。
何度か通った事がある道だからこそ、その不可能さが分かる。
一気に怖くなった。
一瞬で様々な憶測が頭をよぎった。
「もしかしてここはKの家じゃないのか?」
「だとしたらここは?目の前にいるKは?」
「それとも夢でも見てるのか?」
全身の血が冷たくなったのを今でもハッキリと覚えている。
3人とも酷い顔をしてたんだと思う。Kが「一体どうしたんだ?」と聞いてくる。
僕たち3人は顔を見合わせた。
そして一呼吸置いてから、Sが口を開いた。
「いや、あのさ…」
一通り話を聞いた後、今度はKが口を開いた。
Kが口を開いた。
「……お前らが嘘を言ってる訳じゃないみたいだな。
今のお前らの話を聞いて思い出したんだけどさ…
お前ら、神隠しって知ってるか?」
恐らく、いつもつるんでる時のテンションなら、Kを確実に馬鹿にしていた。
お前、なに言っちゃってんの?
と。
しかし、状況が違う。
3人とも、まぁ、知ってる。みたいな感じで軽くうなずいた。
K「今から3年前と……、確か6年前くらいに、今のお前らと、似てなくとも違わない出来事があった。
まず3年前、オレの家と同じ様に山の中腹に住んでいた中学生の女の子(当然、僕らより年上にあたる)が、頂上の住宅地に住む友達の家に遊びに行ってた。
まぁ、何でそんな遅くまで遊んでたのかは知らないが、帰る頃には夜の12時を回ってたらしい。
今のお前らと同じ様に、早く着くって理由で、あの山道を通ったみたいだ。
なのに、夜中の2時を越えても娘が家に帰ってこず、親が警察に捜索願いを出した。
結局、女の子は約5時間後の翌朝、山の中で寝ているのが見付かった。
通っていたはずの山道から20km以上離れた、別の山で。
事情を聞かれた女の子は、
「いつもの道を通っていたのに、何だかいつもと違った。誰かに見られている気がして、変な感じがして、怖くなってその場にうずくまってしまった。」
次に気が付いたのは朝、警察(自警団?)の人に起こされた時らしい。
もう1つの6年前のは、同じく頂上の住宅地から、中腹のおばあちゃん家に向かっていた小学生の兄妹。
夜の7時くらいに家を出たのだが、3時間を過ぎても着かない。
心配になった親が警察に連絡し、夜の1時を過ぎた頃、40km近く離れた2つ隣町の警察から連絡が入った。
子供2人を、山の中でたまたま通りかかったドライバーが発見したと。
その子供たちも、さっきの女の子と同じ様な話をしたらしい。」
Kの話が終わり、僕らは言葉を失った。
どちらの話も、どう考えても女の子や子供たちが行ける距離ではない。
Kの顔を見る。嘘を言っている顔ではなかった。
結局その日は、Kの部屋で泊まって帰った。
妙な出来事のせいか、楽しく喋る元気もなく、すぐに眠りに着いていた。
翌日、帰り際にKから確信に迫る事を言われた。
帰り際、Kに言われた事。
「オレらの地区の地方新聞にも載った出来事だし、○田町の郷土図書館に行けば過去何年分の新聞とかも見せて貰えるしさ、気になるんなら見てくれば?」
夜は怖くても、日が昇れば怖さがなくなるもので。
僕ら3人は、そのままの足で○田町の郷土図書館へ向かった。
初めて入った郷土図書館は想像以上に広く、係の人に案内してもらう事にした。
それは一部(中腹に住む人たち)の間では結構有名な話らしく、「神隠しの記事が見たいんですけど」と言ったら、すぐにその場所へ案内してくれた。
Kに聞いた話では、神隠しの話は2つだったが、何と実際には5つもあった。
残りの3つも前記と似た出来事で、普通では考えられない距離を、それぞれ短時間で移動するという記事だった。
特定の場所や道こそ書いてなかったが、あの場所だと、僕らは何となく感じていた。
もし僕らがあの時ビビって立ち止まっていたら、僕らもどこか別の山へ行っていたのだろうか。そして……………
なんて事を考えていたら、案内してくれた係のおばさんが話し掛けてきた。
「皆ねー、神隠しがあって、しばらくはその話題で賑わうのよ。
でも、1ヶ月もすれば忘れちゃうの。
その見付かった5件は良いとして、他の人達は可哀想よね。
他の人達は未だに見付かってないんだから……」
そう。
神隠しに合い、「見付かった」のが5件、そのまま「消息不明」になったのが12件、僕らが予想していた、はるかに数を上回る件数の記事が、そこにはあった。
約2年に1回、時には年に1回のペースで神隠しが起きている。
何よりも怖かったのが、そんなに頻繁に起きてるにも関わらず、知らなかった自分たち。
そして、それに軽く慣れてしまっている町の人達。
なぜその道を封鎖しないのか、答えは簡単だ。
封鎖しないのではなく、出来ないのだ。
手付かずの山の中の獣道、そんな所一ヵ所封鎖したところで、意味はない。
また別の場所に獣道が出来、また神隠しが起こるのが分かっているからだ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
記載した事は事実で、今でも資料は○児島県の○田町の郷土図書館にあります。
興味がある方は是非…。
怖い話投稿:ホラーテラー ラフラビさん
作者怖話