大学2年生の頃
私たちは親友であり
一人の女性をめぐりライバル関係にあった
私たちは直接そのことには触れなかったが
お互いを意識はしていたと思う
熾烈な争いの結果、彼女の心を射止めたのは私だった
私の人生の絶頂期だ
しかし、それは長く続かなかった
彼女とのドライブ中、私は事故を起こし
彼女は死に、私はおめおめと生き残った
始めの一週間は自失状態だった
次の一週間は正気を取り戻した分
悲しみが波のように押し寄せ私は泣いた
そして一ヵ月した頃
あいつはやってきたのだ
あいつは非常に馬鹿げた提案を私にした
私はその提案に乗った
私とあいつは就職活動をせず大学に残った
そして約7年の歳月が流れたころ
私たちは遂にやり遂げた
タイムマシンを作ったのだ
しかし、エネルギーの関係から一回しか作動させることができない
どの時代に行くかは問題ではなかった
問題は誰が行くかだった
あいつは彼女のことを諦めきれなかったのだろうか?
「いいか、何があっても絶対あきらめるな
必ず彼女の事故をなかったことにするんだ!!
お前にはその義務と責任があるんだからな!!」
私は、なぜあの時「わかった」と言ってしまったのだろう
あいつはタイムマシンの中に私を押し込めた
時間遡行中は振動が予測されるため体中を拘束具で固定する
舌を切らないよう頸椎から顎にかけて固定をした後
あいつは私にリモコンを渡した、拘束具の解除を行うものだ
そして、何らかの事態に備えるため生命維持装置を作動させると
ふたを閉め、完全な密封状態とし
いよいよマシンを作動させた
私は二つの間違いに気づいた
二つとも単純なことだ
一つは彼女を助けることはできないということだ
もしこのタイムマシンで彼女を助けたとしよう
しかし、そもそもこのタイムマシンは彼女の死から始まっている
彼女が死ななければタイムマシンは作られないし
タイムマシンがなければ彼女は助けられない
パラドクスだ
そしてもう一つは
タイムマシンそのもののことだ
私たちのは理論は完璧だった
遡行は成功し7年前にたどり着いたはずだ、それは間違いがない
しかし場所は?
私は今、宇宙空間の中を漂っている
7年間で地球の位置はどれだけずれるのだろう?
考えてみれば地球は自転をしているし、公転もしている
そして太陽系そのものも移動しているのだ
7年間ここで待てば地球がやってくるのだろうか?
それもありえない、
このタイムマシンは遡行直前の運動状態を保持している
私はほぼ地球の自転の速度で等速直線運動をしていて
すでに元の場所にはいない
あいつはこうなることを知っていたのだろうか?
私はどうもそのような気がしてならない
あいつから見れば
私は彼女を奪い、彼女を殺し
永遠に手が届かないところに連れ去った
つまりこれはあいつの復讐なのだ
もうどれぐらいの時間がたったのだろうか
時間感覚がすでに麻痺している
何日か、何週間か、それとも何年か?
漂う中、身動き一つできない私の手には
作動しないリモコンが握られている
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話