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中編3
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Xmasは関係ナイト

私の会社にAさんという事務の女の人がいました。

若いわりに結構古い社員らしく、ノリは良くて明るいイメージの人なんですが、右目をいつも髪の毛で覆っていました。

噂では学生の頃、交通事故で顔の右半分を無くしてしまったのだと聞きました。

髪の毛をたらしてうつ向いてて、パッと見は完全に鬱。

でも性格は明るくて、不思議な感じがする人でした。

税金関係の訳わかめな書類の相談とかで、私もたまに絡らんだりはしていました。

そういう時、Aさんはあまり正面を向いて話してはくれませんでした。

Aさんの鼻は未だにほんの少し歪んでて、やっぱりそういう事気にしているんだぁとか思ったりはしました。

「じゃあすんません、これお願いします(私)」

「了解。あっねえねえ、シカって十回言ってみてよ(A)」

「でっ、でたー!」

「いいから」

「え?動物の鹿ですか?」

「いいからいいから!」

「はぁ、シカシカシカ、シカシカ、シカ、シカシカ、シカシカぁ!」

「…じゃあXmasにサンタクロースが乗っているものってなーに♪」

「あーはいはい…鹿!!ではなく正解はトナカイっすね!?」

「ふふふ、はずれ!」

「ええ!サンタクロースと言えばやっぱトナカイじゃないっすか!?」

「サンタクロースがトナカイに乗るの?」

「ええ?サンタクロースはトナカイに引かれてハイヨーって、確かソリに乗ってますよね?」

「何に乗って?」

「ソリです」

「ハイひっかかったー♪」

「ちょーっとー!卑怯っすよー」

Aさんは横を向いて明るく笑っていました。

いい人なのか悪い人なのか、微妙なラインを行くのがAさんでした。

ある日、例によって書類を渡すついでに不意にAさんからこんなクイズが出されました。

「ねえ、私の目を十秒見て」

流石に驚いて何て言ったらいいか分からず、固まってしまいました。

「あの…何のクイズですか?」

「いいから」

「ええ!?」

「目は絶対にそらしちゃ駄目だからね、心の中で10秒数えてね、はいいくよー!」

Aさんは椅子に座ったまま、クルンと向き直り私を見つめていました。

「ええ!は、はい…」

何て言うか、久々にドキドキしていました。

……

私は何も考えずAさんの目を見つめ、カウントを始めました。

Aさんはブツブツ何かを言い始め、ゴソ!っと手元で何かを動かしました。

でもそれを目で追うと負けになりそうだったので、私は目をそらしませんでした。

するとAさんは、みるみる見たこともない笑顔に変わっていきました。

私も結構真剣だったので、なんだか馬鹿にされている様な気がしました。

「ちょっと何で笑ってるんですか!やめて下さいよ!」

Aさんは私の言葉を無視して、笑い続けていました。

急に不安になり目をずらすと、Aさんの胸元が何故か真っ赤に染まっていました。

「ねえ、今何秒数えた?」

「え?」

気付いたら私はデスクに座り、キーボードに手を乗せたまま呆然と社内を見渡していました。

ご帰宅ムードの社内は、和やかに私語が飛び交っていました。

その中に何故か知らない社員が数名混ざっていました。

目の前にパソコンモニターがあり、書きかけの文章の最後でカーソルが点滅していました。

ついさっきまで私がやっていた仕事という事は、感じからして分かりましたが、全く覚えがありませんでした。

手元の鏡に写る私は痩せこけて、幸薄そうな顔に変わり果てていました。

モニターの枠に小さく表示されてる日付が、何故か9年進んでいました。

その後、過去の事を色々と調べましたが、Aさんはすでに亡くなっていました。

亡くなったAさん宅からは、呪術や黒魔術などの本が大量に見付かったそうです。

呪いの言葉とナイフと9秒間で

私はAさんに”釘付け”にされたのでした。

おわり

怖い話投稿:ホラーテラー ハミーポッポーさん  

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