新郎はおばあちゃんの家を訪問すると、おばあちゃんは愛想良く話してくれたらしい。
私の会社であることも知った上で話をしてくれてたことから、嫌われてたわけではなかったんじゃないかな?と新郎。
私が退職したことを話すと大泣きしてくれたという。
もっとあの人に頼れば良かったかもしれない、けど仕事にもならないのに迷惑はかけられないと言い続けたとのことだった。
今後のことをどうするのかおばあちゃんに、聞いたところ、正直分からないとのこと。
ただ、やはりこの地を離れるわけにはいかないし、ここで近所の皆さんに罪滅ぼしをするのが私の人生だと譲らなかったみたいだ。
「おまえ、なんか役所に見回りして欲しいとか言った??」
新郎が急に言い出してびっくりした。
確かに退職を決めた日に、ばあちゃんからその足で役所に行って、そんな頼みごとをし
た。
「ばあちゃんね、その人達追い返したらしいよ。近所の目があるから余計なことするなって。おまえが頼んだことだろうなって気付いてたよ、おばあちゃん。」
なんか嬉しかった。役所も捨てたもんじゃないって感じた。
「でもな、それがおばあちゃんにとっては大変だったらしいよ。おばあちゃんは言わなかったけど、近所の人の話だと、おばあちゃんが役所に頼ったって思われたらしくって、お隣さんからの嫌がらせがひどくなってったみたい。」
ショックでした。よかれと思ってしたことがそんなことになっていたとは思わなかったです。
私はこの五年間、おばあちゃんに出来る限りのことはしたって言い聞かせてきただけにそのショックは本当に大きかったです。
新郎はおばあちゃんに言われたらしいです。
「もう来ちゃいけないよ?ここはお金に繋がる話もない。しかも色々と面倒な地域だから。こういう雰囲気の場所にいることであんたの雰囲気まで悪くなる。よくしてくれてありがとうね。」
そんなこと言われたらもう来れないな、ということになり、それから新郎は上司に懇願して全く別のに移りました。
ただ心配だったみたいで半年に、一度くらいは顔見せをしたとのことです。
見るたびに家や庭は荒れて、おばあちゃんもやつれていたみたいです。
「帰りなさい」
訪問のたびに一言だけであしらわれてしまったとのことです。
それから何年か経ち訪問も億劫になっていたころに、おばあちゃんからの手紙が会社宛に届いたそうです。
上司がチェックしたところ、私と新郎宛に書いた内容だったらしくすぐに新郎の元へと渡ってきたそうです。
実際の二次会会場でその手紙を見た内容をしるしたいと思います。
おばあちゃんの書く内容なので少し言葉は直してみます。
◯◯建設
◯◯◯様、◯◯◯様。
こんにちは。私のことを覚えていますでしょうか?
よく気遣って頂いたおばあです。
その節はお二人には色々とご迷惑をおかけしました。
年寄りの頭の硬さは死なないと治らないみたいです。
自分が損な生き方をしているのも分かりますが、もうこのまま逝きたいと思っています。
私からすれば◯◯◯さんは孫のような年でした。
新郎さんから退職したと聞きまして、もしかしたら私が原因かもと胸を痛めております。
あんたは優しい人だからいくらでもなんでも出来ます。
新郎さんもなんとかしてくれようと優しい言葉をかけてくれました、ありがとう。
なんとなく、私は先が永くない気がしています。
最期に一言お礼を言わせて欲しかったので手紙を書きました。
本当に、ありがとうございました。
それでは。
おばあちゃんはあまり手が上手く動かなかったので手紙の字はかなり震えています。
手元で今見ていても涙が出そうになります。
新郎はその後すぐに訪問したのですが、納屋の扉は開かず、合間を見計らって訪問してもとうとう会えなかったらしいです。
その翌年あたり、訪問をするとすでに更地となっており、新郎も状況が分からなくなってしまったとのことでした。
ただ、お墓の場所だけは聞けたらしく線香はあげたとのことです。
それからすぐに新郎も退職をし、地元に戻ったそうです。
手紙を私に渡さないといけないと思っていたようですが、疎遠になりつつもあったことで躊躇ったらしいです。
事実、私も同期には辞めるさいに根性無しだの言われて事務所で言い合いをしていたこともあり、連絡をとりづらかったようです。
私が旅行で訪れて思い出したことと、新郎の結婚式があまりにも近く、何かの引き合わせかもと思ってしまいました。
結局、おばあちゃんがどう思いながら亡くなったのかは分からず、息子さんの足取りも詳しくは分かりません。
ただ、おばあちゃんのお墓だけは新郎から聞けました。
今度は線香をあげに行きたいと思います。
怖くもない後日談でしたが、申し訳ありませんでした。
最期に、信じて頂くかはお任せ致しますが、おばあちゃんの手紙の日付と、地主通いを投稿した日付が一致したことは、個人的に何か繋がりを感じてしまいた。
これで私の特異な体験談は終わります。
みなさま、出会う方全てを大切にお過ごし下さい、
ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー セロさん
作者怖話