誰もいない町に住んでいる理緒と南緒と美緒。
夜になると電話が鳴るのです。
とても不思議でした。
理緒は言います。
「電話に出てはいけない」
南緒は言います。
「電話に出てはいけない」
美緒は泣いてしまいます。
誰もいやしないのに。
ある時、美緒は買い物へ出かけました。
途中で通せんぼしてきたバッタはもちろん踏み潰します。
もしかしたらキリギリスかなぁと思いましたが、気にしません。
今夜は電話が鳴らずにゆっくりと眠れるでしょう。
今日は負け犬の遠吠えで目が覚めました。
いつも六時になると聞こえてくるのです。
「タマネギタマネギってうるさいわね」
理緒は怒り南緒は笑っています。
美緒は一日中寝ているふりで過ごしました。
ある時、美緒は床屋さんに行ってみました。
両手にカマキリを従えていたのが怖かったのか、床屋さんは気絶してしまいます。
仕方がないのでおちょぼ口のまま帰りました。
今夜も電話は鳴らないでしょう。
今日は理緒の誕生日。
みんなが次から次へとプレゼントを持ってきます。
分度器やふんどし、れんこんもありました。
さも当然のごとくパクチーを持ってきたイソギンチャクだけは生涯許しません。
南緒は沸き上がる殺意を抑え逆立ちしています。
ひととおりプレゼントをもらい終えた理緒は、それらを特大のミキサーで粉々にして一粒一粒返しに行きました。
美緒はその光景を眺めながらタガメの優しさを思いだしてしまい、プレゼントを渡せませんでした。
ある時、美緒は本屋さんへ向かいました。
玄関を出てからずっと話しかけてくるカナブンの存在にはあえて気付きません。
本屋へ着き、美緒は読みたい絵本があるか探します。
カナブンが何やらたわ言をぬかしていますがあえて気付きません。
今夜も電話は鳴らないでしょう。
今日は理緒と南緒がケンカをしました。
「パセリがあるのにセロリがない」
理緒は叫びます。
図々しい南緒は垂直とびで済ませています。
仲裁に入ったタニシはまさかの木っ端微塵です。
美緒は布団に潜り、大宇宙の塵となったタニシよりも学校に通っていると言い張っているメダカを誉め讃えたいと思いました。
ある時、散歩をしていた美緒をお巡りさんが呼び止めました。
「電話が鳴っていますよ」
お巡りさんは言います。
命の危険を感じた美緒はとっさにフライドチキンを食べ、家へと急ぎました。
電話が鳴っています。
美緒は考えました。
ザリガニが怯んでしまうぐらい、一生懸命考えました。
どうしてどうしてどうして
そして、
美緒は知ります。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話