ありがた迷惑な人、皆さんのまわりにもいないだろうか?
例えば「会社でボールペンのインクがなくなった⇒翌日ボールペンを10本くらい買ってくる」
「肩が少し痛くて『パソコンが打てない』とぼやく⇒頼んでもいないのに、湿布薬を何枚も買ってくる(しかも会社の経費で…)」
…といった具合だ。
この話は、上で記したような「ありがた迷惑な人」ではなく、「宝石」のお話。
ある宝石は持っていたら願いが叶う、と評判だった。
しかし、その反面「恐怖の石」と恐れられていた。
その宝石の効果は俗に言う「幸福ストーン」の類とは一味違い、願いをこめれば100パーセント絶対にその願いは叶う、というおすみつきだ。
…ただ、その叶え方に問題があるために「恐怖の石」と呼ばれているのだった。…
…ある看護師は脳外科の手術室勤務だった。
当時の脳外科の手術は、開頭手術(電動のこぎりで頭を切って手術を行う)という方法が主流だった。
そのため、脳外科の手術は他の部位と違い、とても時間がかかる。
彼女は毎日毎日遅くまで仕事三昧の日々を送り、「いい加減、こんな仕事辞めてしまいたい」と思うようになっていた。
実際に上司に辞職願を出したこともあるが、彼女はベテラン看護師で代わりもいなかったため、それは認められなかった。
そんなある日、彼女は久しぶりの連休で旅行に行き、怪しげな露店で「ある宝石」を手に入れた。
露店の主は「この宝石を持って願いをこめれば必ずその願いは叶いますよ。ただし…願いは正確な内容にしてくださいね。」と宝石の説明をした。
もちろん、それが「恐怖の石」であることまでは知らせなかった…。
家に帰った彼女は宝石を見ながら、「ほんとかなぁ」と半信半疑だった。
そして、いつもと変わらぬ日々を送っていた。
辛い毎日。彼女の精神的な疲労も蓄積する一方だった。
ある日、我慢できなくなった彼女は宝石に願いをこめた。
馬鹿馬鹿しいとは思いつつも、主の「必ず」という言葉がつよく記憶に残っていたためだろう。
「仕事を辞めたい」と願ってみた。
「叶わなくて当然なんだけど…」
そういう気持ちがあったせいか、その願いは「仕事を辞める」という、とても漠然とした内容だった。
翌日、いつもどおり彼女は手術室に入った。
そして、またいつもどおり、医師が使う開頭用の電気のこぎりの準備をしていた。
すると、スイッチも入れていないのに、急に電気のこぎりが動き出した。
ベテランの彼女でもそれは初めての事態で、つい、(それとも勝手に?)手でのこぎりを止めようとしてしまった。
結果、彼女は5本の指を失った。
そのため、彼女は仕事をすることが不可能となった。
つまり、「仕事を辞めたい」という願いは見事に叶ったわけだ。
しかし、それによって支払われた代償はあまりにも大きい。
当然、彼女は入院した。
その看病には彼女の母親がついていた。
母親は高齢で彼女を出産したため、今はかなりの年齢になっていた。
毎日毎日彼女の病院まで足を運び、疲労がたまっているのは明らかだった。
そんな母親を見て、彼女は「お母さんにもっと楽をさせてあげたい」と思うようになった。
そして、その思いを宝石を持って願いにこめた。
翌日、彼女は自殺した。
母親は彼女の看病から解放された。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話