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中編3
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少し早い目覚まし時計

心不全は皆さんご存知だろうか?

原因は様々だが、心不全とはその名のとおり「心臓の働きが不完全になる」状態を示す。

その状態が悪化すれば、心臓麻痺やら何やら言葉の違いはあるが、最終的に「急性(慢性)心不全」でその人間は死んでしまう。

しかし、「急性」の場合、素早い処置次第で助かる可能性もずいぶん違う。

ある病院で患者が上記の「急性心不全」で突然死を迎えた。

廊下での出来事だったので、ナースコールは押せなかったようだ。

まだ50歳代で若く、病院関係者にとっても予期せぬ死だった。

原因は「心筋梗塞?」と思われたが、変死の類ではないので、詳しくは調査されなかった。

患者には家族がなく、遺留品の始末は病院で行われた。

ほとんどの遺留品は廃棄されたが、その中で「目覚まし時計」だけは状態がよく、まだまだ使えそうだったので、病院の看護師用の仮眠室で使用されることとなった。

その目覚まし時計、見た目はきれいで時間の狂いもなかった。

ただ…目覚ましのアラームが少し壊れていた。

ちなみにその病院の夜勤は看護師1人で行う。

夜勤の仮眠時間も決められていて、前半は夜中0時から2時。

そこで一度巡回やカルテ記録をする。

その後、2時30分から4時が後半の仮眠時間となっていた。

ある看護師が当直のとき、仮眠室で件の目覚まし時計をセットした。

仮眠時間は決められているので、当然前半は2時少し前に設定。

しかし、なぜかその目覚まし時計は2時5分にアラーム音が鳴った。

看護師は「ちょっと遅れちゃったじゃないの!何で5分遅いの?」とぼやいたが、所詮5分。大きな誤差ではないので、あまり気には留めなかった。

ある日、その話を違う看護師にすると、「え、あなたも?私もそうなの。やっぱりこわれてるのかな?」と口々に言い合った。

しかし、「でも、5分だし、設定を間違えたのかもね」

と、みな楽観的だ。

ただ一人の看護師(A氏)を除いて。

彼女は青ざめていた…

なぜA氏は青ざめていたのか…?

少し話を戻そう。

その目覚まし時計の持ち主が亡くなったときの当直看護師はA氏だった。

患者はA氏が発見したときには、すでに事切れていた。

その発見時間は2時20分。

その日、A氏は普段の仕事の疲れからか、仮眠時間は前半は2時まで、と決められているにもかかわらず、2時20分前まで仮眠していた。

その後急いで巡回して、廊下で「急性心不全」で死亡した患者を発見したわけだ。

もし…A氏が決まり通り、2時に巡回していたなら、患者は助かったかもしれない。

患者が2時から発見までの間の急変なら、A氏も適切な処置ができただろう。

しかし、その時間A氏は時間オーバーの仮眠をとっていた。

目覚まし時計が鳴り続ける2時5分は、患者の死亡時刻だったのではないだろうか?

A氏が時間通り巡回して、素早く処置をしてくれていれば助かっていたかもしれない、患者の無念。

その思いが、目覚まし時計にこめられていたのかもしれない…

怖い話投稿:ホラーテラー たけっぴさん  

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