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中編3
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自己出産

ある病院で語られた、何とも不思議で、後味の悪い話。

看護師(A氏)は妊娠をしていた。

妊娠してもうずいぶん月日がたつ。

お腹も大きくなり、仕事に行くのがとても辛かった。

しかし、彼女とその夫には莫大な借金があった。

借金返済のため、彼女も身重の体に鞭打って仕事を続けた。

…ところで、彼女の勤める病棟にひとりの金持ちの老人がいた。

その老人には身寄りがない。

また、猜疑心が強く、入院していても自分のお金はいつも肌身離さない。

金に対する執着心はただ事ではない、と病院内でも評判だった。

とても変わった患者だったので、A氏はそのことを家でよく夫に話していた。

しかし、最近になってその老人は重症の肺炎に罹った。

酸素吸入と点滴が必要となっていた。

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A氏は仕事を続けていた。

お腹の赤ちゃんも順調に大きくなっていった。

いよいよ仕事に行くことは無理、思われたある日。

A氏の夫はある提案をした。

「その年寄りからお金、奪っちゃおうよ」

と言うのである。

しかし、その老人は寝ている間もお金を肌身離さない。

いくら肺炎で弱っているとはいえ、少し無理がある、とA氏が答えた。

「だったらその酸素を、夜勤のときにこっそり止めればいい。」

「ナースコールは隠してしまう」

「そうすれば朝には患者は死んでいるから、その隙にチャッチャと奪えばいいじゃん!」

…なんとも軽い作戦である…

しかし、事実上それはほとんど「完全犯罪」といえた…

早速A氏は、夫の言われるままに夜勤のときに、老人の酸素を止めた。

ついでに点滴も止めた。

驚くほど簡単だった。

夜眠っている間は老人も全く気づかず、自覚症状もなかなか現れない。

苦しくなった頃にナースコールを押そうにも、それはA氏によって隠されている。

…翌朝、老人は息を引き取った。

A氏は一番に病室に行った。

そして、老人の死体へ酸素を再び流した。

点滴は引っこ抜いた。(老人が錯乱状態で、自分で抜いたことにするため)

さらにナースコールを元に戻した。

最後の仕上げ…お金を老人から取ろうか、という瞬間。

急にA氏は産気づいた。

気が狂いそうなほど腹が痛い。

A氏の下半身からは羊水が大量に流れた。

「生まれる…!」

A氏はそう覚悟し、違う看護師を呼ぼうかと考えた。

しかし、今の状況で呼べるはずもない…

結果、A氏はその病室で自己出産した。

出てきた子供の顔はしわしわだった。

生まれたての赤ん坊は、大抵しわしわである。

A氏もそのことを知っていたので気に留めなかった。

赤ん坊を抱き上げ、口の中の羊水を吐かせようとしたその時…

赤ん坊の顔のしわは、みるみる酷さを増していった。

まるで老人のように…!

その後、赤ん坊はA氏をまっすぐに見つめ、

「勝手にお金取ったらあかんよ!」

と怒鳴った。

怖い話投稿:ホラーテラー たけっぴさん  

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