怖くてせつない昔話です。
そのむかし、ある所におじいさんとおばあさんがいました。おばあさんは、おじいさんの事が大好きで、いつも「死ぬも生きるも一緒じゃ」と口癖のように言っていました。
ある年の夏におばあさんは疫病にかかってしまい亡くなりました。
おばあさんは亡くなる前に「わしが死んでも墓には埋めんでほしい、大好きな爺と一緒にいたいので奥の部屋に座らせて置いといてほしい」と遺言を残しました。
おじいさんは、おばあさんの遺言に従いおばあさんを奥の部屋に座らせて置いておきました。
一人残されたおじいさんは、最初はやっぱり寂しかったのですが、毎晩夜中になると奥の部屋から「爺よ!爺よ!そっちに行ってええか?」と、おばあさんの声がします。
「いかん!くるな!」と答えると声はしなくなりますが、またしばらくすると「爺よ!爺よ!そっちに行ってええか?」とおばあさんが話かけてきます。
「いかん!くるな!」と答えると声はしなくなる。
これを朝まで繰り返すのです。
おじいさんは、何日も何日も毎晩眠れずに困り果てました。
夜になればおばあさんの声がする。
おじいさんは「このままでは婆に殺される。」と悩んで家を捨てることにしました。
翌日の早朝に、おじいさんは旅支度をして家を出ました。
すると後ろから「爺よ何処に行くんじゃ」とおばあさんの声がしました。
振り向くとそこにはカチカチに干からびて目には蛆をわかした、おばあさんが立っていました。
驚いたおじいさんは一目散に逃げ出しました。
おじいさんの後ろをカチカチに干からびた、おばあさんがどこまでも追いかけてきます。
逃げるおじいさんの後ろから「爺よ!爺よ!何故逃げるんじゃ!」と声がして追いかけてきます。
困り果てたおじいさんの前にお寺が見えました。
お寺の前では、住職が箒で掃き掃除をしています。
おじいさんは、住職に助けを求めて事情を話して寺にかくまってもらいました。
しばらくするとカチカチに干からびた、おばあさんが「爺よ!爺よ!」と叫びながらやって来ました。
住職は、お経を唱えながらおばあさんを箒で掃くと、おばあさんはバラバラと骨になって崩れました。
骨からはしばらくの間「爺よ!爺よ!」と声が聞こえましたが、やがて静かになりました。
これは私の住む地方に伝わる民話です。
おばあさんのおじいさんに対する愛情は少し羨ましく思いました。
でも流石にここまできたら怖いけど
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話