【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編3
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窓の上

いつもと変わらない夜だった。

学校が終わり、

独り暮らしの寂しい部屋に入る。

昨日の残りの夜食を食べ、

風呂に入ってあとTVをつける。

ニュースのわかりやすい

解説をする番組がやっていた。

見ているのか見てないのか

自分でも怪しいくらい

ボケーっとただ眺めた。

番組が終わり、TVを消した。

TVの音も消え、

独り暮らしの部屋に静寂が訪れる。

寝るか。

部屋の電気を消し、

豆電球の少ない光でベッドを見つけ、座る。

寝る前に、と

ふと携帯を開き、

ホラーサイトを何気なく開く。

そのサイトは誰でも簡単に

怖い話を投稿できる珍しいサイトだ。

創作でも、コピペでも、実話でも。

たまに、背筋が凍るような

ゾクッとする話が投稿される。

それを見つけるのが、

独り暮らしの寂しい毎日の

楽しみになっていた。

ある人の投稿を見て、

これくらいの怖い話なら

俺でも考えられるかも、と思った。

どうせなら、いい評価をとりたい。

どんな話にしよう。

そう思いながら、

ベッドから立ち上がり、

部屋の窓から顔を出して

タバコに火をつけた。

暗いなかに携帯の画面が良く光る。

いざ書こうとすると

なかなか思い付かないもんだ。

サイトを開いたまま、

窓枠に携帯を置いた。

タバコを吸いながら、

怖いと思うのは一体

どういう時だろう?と考える。

心霊スポットで、

幽霊に出くわす?

ありきたりだ。

やはり、一番怖いのは、

日常に紛れ込む恐怖だろう。

例えば、ふと鏡を見ると、

鏡に映る自分が自分ではない。

風呂で髪を洗う、顔をあげると

そこに知らない女が立つ。

うん。怖いと思う。

日常に紛れ込む恐怖。

例えば、今こうして

タバコを吸う俺にもそれは当てはまる。

窓の上から人間が覗いてたら怖いかも。

なんてな。

と下らない妄想を巡らせ、

窓の上を見た。

そこには、上から覗き込むように

顔の上半分だけを出した人間がこちらを見ていた。

嘘だろ・・・!

すぐに窓を閉め、煙草の火を消した。

あまりのことに焦って

椅子を蹴ってしまった。痛い。

目が合った。

アレはなんだ?

なんだったんだ?

こういうとき、少しの時間でも

頭は凄くいろんなことを考える。パニックだ。

部屋のなかをウロウロする。

もう一度見る勇気は俺には無い。

物音ひとつしない静かな部屋が俺の恐怖心を逆撫でる。

こんな時、独り暮らしの静かさに本気で嫌気がさす。

彼女の一人でもいたらなぁ。

少しの落ち着いて考える。

きっと、上の階の人が見てただけだ。きっとそうさ。

自分に言い聞かせるように

わざと声に出して言う。

そういえば、上の階はちょっと前に引っ越してそれから人は入っていなかった。

余計なことを思い出した。

見間違いだ。

疲れてたんだよ。

忘れろ。忘れろ。

窓を恐る恐る見続けたが、何も起こらない。

やっぱり俺の見間違いだったんだよ。

フゥー。と長い溜め息をつく。

だいぶ落ち着いてきた。

携帯を見た。さっきのサイトが開きっぱなしになっている。

そうか、今の話、投稿してみよう。

少しばかり脚色して、もっと怖くして。

そうして、今見たことを文に書き起こした。

なんか、オチが弱いなぁ。

顔を見た、ってだけじゃあな。

そうだ、こうしよう。

窓を慌てて閉めた俺は、安心すてこう言う。

「はぁ、怖かった。すぐに窓を閉めたから、部屋には入って来てないだろう。」

すると、声が聞こえるんだ。

「もういるよ。」

どうだ、なかなか怖いだろう。

高い評価を期待して、投稿ボタンを押そうとしたその時だった。

「わかってるじゃん。」

静かな部屋に、声が響いた。

怖い話投稿:ホラーテラー ホラテラマンさん  

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