今年も祖父の家に行く。
そう思うと、少し憂鬱になる。
毎年、お盆や正月には祖父の家がある田舎に行き、親戚一同で集まるのだ。
そこで、じいちゃんに会う。
正直、あまり会いたくはない。
昔は大好きだったが、今は僕にとって怖い存在である。
別に怒ったり癇癪を起こすわけではない。
孫である僕に優しくしてくれるし、お小遣いもくれる。
本当に優しくて、そんなじいちゃんが大好きだった。
あの体験をするまでは…
僕が小学生の時、お盆で田舎に帰っていたときだった。
その時はばあちゃんが亡くなってから随分経っていて、じいちゃんは一人で暮らしていた。
久しぶりに僕達に会って嬉しそうなじいちゃん顔を覚えている。
日が暮れるまで従兄弟達と山や河原で遊び、その日はみんなで夕ご飯を食べた。
その夜のこと。
みんなが寝静まった夜中、僕は目を覚ました。
眠かったが、トイレに行ってから寝直そうと思い、僕はトイレへと向かった。
トイレは客間から少し離れた、じいちゃんの寝室の方にある。
僕が廊下を歩いていると、じいちゃんの部屋から明かりが漏れていた。
「じいちゃんまだ起きてたのか…何してるんだろう?」
ちょうど寝室の襖がわずかに開いていたので、そこからこっそりと覗いてみた。
じいちゃんは起きていたが、普段とは何か様子が違った。
布団の上にあぐらをかいて座っているが、その手にはドライバーが握られていたのだ。
「ドライバー?何に使うんだろ?」
と、疑問に思っていると…
じいちゃんはドライバーを自分の首筋に突き立てた。
だが、ドライバーは刺さるどころかスルスルとじいちゃんの首に入っていく。
「!!」
驚く僕の前で、じいちゃんはドライバーをクルクルと回し始めた。
その時だった。
よく見ようとして体を乗り出した時、僕の額が襖に当たってしまった。
「しまった!」
と思ったが、次の瞬間にはじいちゃんが襖を開けて恐い顔で立っていた。
『なんだ、お前か。』
とじいちゃんは言うと、いつもの優しい顔に戻った。
『いいか、今見たことは忘れなさい。』
「うん…」
と頷くと、じいちゃんは優しく僕の頭を撫でた。
次の日も普段と変わらないじいちゃんだったが、やはりどこか怖かった。
その祖父と今年もまた会う。
だが、最近になって気付いたことがある。
僕自身、自分の首筋にドライバーを差し込みたくなる衝動に駆られる気がするのだ…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話