大して怖くもないのだが、ほんとにあった怖い話。
一部フィクションもあるが、まあ、ほとんどは本当のこと。
…その日の夜勤は暇だった。
患者はみな寝しずまり、追加眠剤を要求する者もいない。
急変の恐れのある患者もいない。
カルテも早々に書き終えた。
こうなると、看護師達のすることは「おしゃべり」である。
その日の夜勤はAとBという仲良し同士の看護師だった。
はじめはちょっとした世間話をしていた。
しかし、ふたりとも普段からの仕事のストレスが溜まっている。
ここぞとばかり、同僚や上司、さらには患者の悪口まで言い合いだした。
こうなると、女性はストップがなかなか効きにくい傾向がある。
話はだんだんエスカレートしていった。
「主任ってさ、どれだけ長く看護師やってるのか知らないけど、全然わかってないわよねー」
「C先生の患者って全然よくならないわよね。ほんとヤブ医者の典型!」
「そうえば、あの患者さん、全然家族来ないわね。きっと入院前はみんなにひどいことやってたに違いないわ!」…
あることないこと…それこそどこまでが事実なのかわからなくなるほどに、たくさんの噂話や悪口を言った。
ところで、たいした根拠はないのだが「他人の悪口を言うとよくないことが起こる」と感じたことはないだろうか?
例えば、昼休みに上司の悪口を言う。
その後、仕事でちょっとした失敗をする。
そのとき、上司に怒られると思いきや、優しくなぐさめてくれる。
悪口を言った自分がはずかしくなる…
といった具合だ。
別に、ここで上司が関与しなくても構わない。
とにかく人のことを悪く言ったあとに、いやなことが起こったら「あんなことを言ったから…」と妙な反省をする、ということは意外と多くの人間が経験している。
話を戻そう。
…AとBはさんざん患者や同僚の悪口を言った後、Aだけが病室巡回をした。
一部屋ずつ懐中電灯で照らしていき、患者の無事を確認する。
すると、一人の患者がシーツを細長く切ってドアノブにかけ、それを首に巻いて泡を吹いていた!
すぐにAはBを呼んだ。
Bが来るまでの間、Aは患者の気道を確保し、人工呼吸と心臓マッサージを懸命に行った。
しかし、Bが到着するころには、患者は手遅れの状態になっていた。
「あんなこと言ってたから…?」
二人はそう思った。
その悪口の中には、今死んだ患者のことも多く含まれていたからだ。
「きっと、神様か何かが私達を見ていて、罰か何かを与えたんだわ…」
二人は素直に反省した。
次の日、看護主任が病院へ出勤していたので、ふたりは状況を報告した。
もちろん、悪口のことは隠して。
主任は
「そう…大変だったわね。おつかれさま。今日はゆっくり休んでね。」
と優しく労をねぎらってくれた。
また、二人は恥ずかしくなった。
患者に身内はなかった。
翌日、仕方なく病院スタッフが患者の荷物をまとめていると、盗聴器と盗撮カメラが発見された…
それが元で、盗聴器が他にもしかけられているのではないか?と病院側は不安に思った。
…ある日、抜きうちでナースステーションを徹底的に捜索した。
その結果、ロッカーの裏、主任専用の机の鍵つき引き出し、診察室のベッドの裏、さらには休憩所の冷蔵庫の裏…などから5つの盗聴器やボイスレコーダーが発見された。
…怖くなくてごめんなさい。
でも、ほんとの話なんです。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話