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短編2
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蝶結び

その日は木枯らしが冷たく吹き付けていた。

大学へ向かうため、僕はジャケットを羽織り、アパートを出た。

表通りはやや坂道になっており、その坂を上る方に歩いていく。

木枯らしが僕の顔に当たる。

「今日は寒いな。」

と下を向き呟きながら歩いていくと、視界にどす黒い物が入る。

それは坂の上から流れてきていた。

「?」

まるで血のようなそれを、僕は靴につかぬよう端によけた。

僕が立っていた場所に、その血らしき液体が流れていった。

「…どこからだ?」

僕はそのどす黒い流れを辿っていった。

しばらく行くとゴミ捨て場があり、そこから流れてきているようだった。

「えっ!?」

思わず口に出してしまった。

積み重ねられたゴミの上に、人が横たわっていた。

いや…人…なのか?

間違いなく、人。

それだけなら、別に判断には困らない。

ただ、それは…結ばれていた。

そう、本当に“結ばれていた”のだ。

まるで巨人が人間の手足を引っ張って伸ばし、骨を砕きながら蝶結びにしたかのようだった。

血が、その結ばれた人の腹部から流れていた。

動けずにいると、僕の後ろをサラリーマン風の男が追い越していった。

僕は慌ててその男を呼び止めた。

「あ、あの、これ見て下さい!」

その男は面倒くさそうに振り向くと、

「あぁ…それですか…」

と言った。

「大変です!警察を呼びましょう!」

と僕が言うと、

「いいんですよ。だって、結ばれてるんでしょ?」

と男は言い、足早に歩いていった。

「どういう事だ…?」

混乱しながらも携帯電話を取り出し、震える指で警察へ電話をかける。

「はい、警察です。どうされました?」

繋がった!

「あの、人が死んでるんです!」

「なんですって!詳しく話して下さい!」

「えっと、人が蝶結びに結ばれて死んでるんです!」

と僕が言うと、

「なんだ…」

と、落胆した声で警官は答えた。

「別にいいんですよ。だって、結ばれてるんでしょ?」

と言われ一方的に電話を切られた。

…何なんだ?

疑問に思いながらも、僕は大学へ急いだ。

数日後、表通りを歩いていると、ゴミ捨て場には例の結ばれた人がいた。

その前で立ち尽くしている若い男が僕を呼び止める。

「あの…これ!?」

僕は面倒くさそうに振り向くと、

「いいんですよ。だって結ばれてるんでしょ?」

と答えた。

今日も木枯らしが強いな。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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