海外在住、旅行会社に勤めています。ホテルに関する不思議な体験談がいろいろありますが、その中でも「あっけにとられた」(体験した上司談)ものを紹介します。
そのホテルは特に事故や事件があった訳ではないのに、なぜか幽霊を目撃する話が後を絶ちませんでした。とは言っても、誰もいないはずのトイレで話し声が聞かれるといった程度のもので、イギリスの文化の影響を受けたこの国では、別に騒がれることでもなく、かえって歴史がある証明というような感じで受け取られています。
日本から来た30代の夫婦が、街の中心地という立地条件のいいこのホテルに泊まることになりました。奥様はスポーツが大好きなアクティブな方で、旦那様は大人しい方で読書が趣味ということでした。ラウンジでツアーやお土産を案内後、ではご滞在をお楽しみくださいとホテルに送り出したのですが、滞在を楽しむどころか、その数時間後には地元の救急病院から呼び出しを受けることに。
上司が慌てて車で10分程の救急病院に向かって、奥様からこのような話を聞いたそうです。
ホテルにチェックインして後、奥様は早速新調した水着に着替えて、南国のホリデーを楽しむために旦那様をホテル内のプールに誘ったそうです。旦那様は泳げないので、読みかけの小説を持ってプールサイドで奥様のおつきあいです。
しばらく奥様が水の中で開放感に浸っていると、ふと、プールサイドに寝そべっている旦那様と目が合ったそうです。すると、突然、旦那様がすくっと立ち上がってプールに向かって助走をつけ、飛び込んでしまったそうです。え?泳げないはずなのにと驚いていると、案の定、旦那様は溺れ始めてしまい、奥様はびっくりして日本語で助けを呼び、パニックに陥ったそうです。
その騒ぎにプールにいた数名の男性が旦那様が溺れていることに気づき、プールに飛び込んで助けてくれたそうです。その中の一人が人工呼吸を施そうとした途端、旦那様は目を開け、むくっと起き上がり、衆人環視の中、プールの脇に植えられたやしの木に登ったとのことです。
奥様は、これは主人ではないと強く思ったそうですが、実際に目の前で起こっていることなので、信じざるを得ないといった気持ちだったそうです。一瞬、何が起こっているのか唖然としたところ、旦那様は気を失ったようにどさっと木から落ちたそうです。
それからは、連絡を受けたホテルのセキュリティの人が来て、旦那様を救急車で病院に搬送したところで、うちのカスタマーサービスに電話が入ったのです。
上司が病室に着いた頃には旦那様はけろっとして、なぜ自分が病院にいるのか?といった様子だったそうです。そして、旦那様は何も覚えていないそうです。社内では、猿の霊?と、半分面白い話(当該のお客様には災難でしたが)として語られています。
怖い話投稿:ホラーテラー はじめさん
作者怖話