これは、香川県の仏生山という地域に伝わる民話です。
昔々、仏生山には何度作り直しても必ず決壊してしまう池があった。
雨の少ない香川県では、溜め池は田畑や農作物を、庶民の生活を左右する重要な役割を担うもの。
何度作り直しても決壊してしまう溜め池に悩んだ周辺の村人は、占い師にどうすれば池が決壊しない様にできるのかを聞いてみた。
すると占い師は、「明日の朝一番に、『ちきり』を持った少女がここを通るのでその少女を池が決壊した場所に埋め人柱にすればよい」
とのこと。
(なお『ちきり』とは機織り?に使う道具らしい。)
翌日、池のほとりで待ち構える村人達の前に、一人の少女が…。
すかさず村人は、「お前、ちきりを持っているか?」
と尋ねる。
何も知らない少女は、はい、と答えてしまう。
少女は哀れにも、人柱として池にほうり込まれる。
以来、占い師の言い付け通りに人柱を立てた池は決壊することは無くなった。
だが、その池の近くでは少女の啜り泣く声が聴こえるという。
「いわざらば…こざらば…」
(「言わざらば来ざらば」)
ちきりを持っていると言わなければよかった、あの日ここに来なければよかったと…
執筆者:これ実話です。
今でもこの池のほとりには少女をかたどった乙女の像というのと、池の真ん中に慰霊の祠があります。
怖い話投稿:ホラーテラー 円さん
作者怖話