夏になると真夜中に学校のプールで泳ぐのは、毎年の恒例行事になっていました。
夏もそろそろ終わりに近く、真夜中のプールで泳ぐのは今日が最後になるだろうという日の話です。
僕と浩司と憲一といつもの三人で、いつもの様にはしゃぎながらプールで遊んでいました。
(僕の小学校は田舎にあり、当時はプールに一つ薄暗い外灯があるだけで、星が輝いていなければ真っ暗闇でした
プールのこちら側からは25㍍先の奥は全く見えません。)
はしゃぎ疲れて、三人並んでプールに浮かびながら空を見上げ、「来年からは中学生だね?」なんて話している時でした。
プールの奥側から「ドボンッ」と、何か投げ込まれた様な音がしました。
(先ほども話した通り田舎なので、プールの周りは田んぼがあるだけで、人の気配があれば気付きますし、僕逹以外には誰もいなかった事は確実です。)
その音にビックリして三人で顔を見合わせていると、「ドボンッ」又、音がしました。
気付くとさっきまで、聞こえていたはずのカエルの鳴き声がやんでいました。
それと同時に、生温かい風が吹き抜けると全身に鳥肌がたち、何か嫌な予感がしました。
それは僕だけではなく、浩司も憲一も同様で「そろそろ帰ろう」と誰が口に出したかわかりませんが、プールから上がろうとフチに手をかけた時です。
見上げると2㍍はある黒い人の形をした何かが、そこに立っていました。
「ギャー」僕逹は悲鳴をあげ……
そこから気を失ったのか、気がつくと服を脱いだ場所に寝ていました。周りを見ると浩司は隣にいますが、憲一の姿がありません。
浩司を起こしましたが僕逹は怖くなり、憲一を探すことなく逃げだす様に家に帰りました。
翌日、母親の声で目を覚ますと、憲一の親から電話があり息子が帰ってこないとの事でした。
その後は昨晩あった事を泣きながら親に話すと、浩司と浩司の親、憲一の親とで集まりました。
浩司もだいぶ親に叱られたらしく泣いていました。
皆でプールに行くと憲一の脱いだ服がそこにあり、周辺を探しても憲一の姿はありません。
僕逹は学校周辺も探しましたが見つからず夕方になりました。
いよいよヤバいという話になり、警察に連絡し学校の教師、PTAと200人体制でその後3日間捜索しましたが見つからず4日めの朝、憲一の親から電話で小学校の裏山の神社の石段に座っているのを発見され病院に搬送されたとの事で、僕も親と一緒にお見舞いにいきました。
病院にはすでに、浩司と浩司の親も来ていました。
憲一はベッドに横にされ、点滴や脳波をはかる装置?をつけて口を半開きにし、目を開けていましたが一点を見つめたままで、声をかけても反応はありませんでした。
医師の話では身体に問題はないが、余程のショックを受けたのか、口が聞けなくなっているとの事でした。その後、僕と浩司は夏休みが開けても何度か、お見舞いに行きましたが、あの夜の話は一度もせず、憲一がこうなってしまったことで気まずくなり、あれほど仲良くしていたのがウソの様に離れ、憲一も学校に戻ってくることなく中学を卒業し高校2年になり夏休みが終わる頃でした。
(憲一は小学校を卒業すると同時に精神疾患専門の学校に移ったと親から聞いていましたが、実際には学校にはほとんどいかず家でぼーっと過ごしていたと後で聞きました。)
久しぶりに、浩司から電話がきたと思ったら「憲一が自殺した」と聞かされました。
憲一が寝たのを親が確認し、朝起こしに行くと憲一が見あたらず、その後車庫で首を吊っているのが発見されたそうです。
その足元には、遺書と僕と浩司宛てに書かれた手紙が一通。
手紙の文字はとても汚く鉛筆に力を入れすぎて何度も芯を折った様子でこう書かれていました
「楽しかったあの頃。死ぬ事なんて考えなかった。理屈抜きで。首は苦しいかな?。ビッチャビチャの血。そろそろダメみたい。 うまく逃げて。 手がとどかない場所へ。別々に。すぐ近くにいるから。」
怖い話投稿:ホラーテラー ソウブンゼさん
作者怖話