これは俺が中学二年生だった頃の話。
ある社会科の教師が居たんだけど、そいつは性格が最悪な奴で顔もキモかった。
その上、いつも不健康そうな顔色が特徴的だった。
そして、そいつと一悶着があり、それ以来俺は「授業テロ」を敢行するようになった。
しかし、そいつは毎時間毎時間何ごともなかったかの様に授業を進めていたので、ドンドン俺の授業テロはエスカレートしていった。
そんなある日、俺は「授業テロ」どころではない程の睡魔に襲われ、その日のそいつの授業は睡眠を取ることに決めた。
そして、授業後半まで熟睡していた俺は、周りの騒がしさに目を覚ました。
机に伏せながら俺の脳みそが騒音を反芻していると、その騒音は俺に対する罵倒であることに気付いた。
パッと顔を上げると、俺の机の前に例の社会科教師が佇んでて、物凄い形相で罵詈雑言を撒き散らしていた。
俺と目があったにもかかわらず、そいつは今にも襲いかかりそうな感じで俺の悪態をつき続けていたと思う。
と推量で言うのも、見たこともないそいつの怒りに塗れた表情に恐怖したことと頭痛の激化で、俺は頭が真っ白になってたからだ。
周りは恐らく恐怖のあまり止めなかったんだと思う。
ちょうどその何分か後に、救いのチャイムが鳴って鳴ってくれて俺は逃げるように保健室へ行った。
そのまま俺は社会科教師に会わずに早退した。
自宅のマンションのエレベーターに乗るまで、俺は手の震えを押さえることができなかった。
いっそマンションの自宅部屋のとなりに住んでいる祖父母の部屋で休ませてもらおうかと思ったが、二人とも留守だった為、渋々自宅で休むことに決めた。
当然、平日の昼頃なので自宅は誰もいない。
頭も痛く、またまた睡魔も襲ってきたのでやむなくベッドで俺は眠りについた。
どれくらいの時間がたっただろうか、外はもうすっかり黒に染まっていた。
俺が目を覚ます要因になったのは、何回も無視していた電話がなかなか鳴りやまなかったからだった。
家族は帰って居ないらしく、電話はなおもけたたましく鳴り響いていた。
大分頭痛も治っていた俺は、怪訝そうな顔をしながら何の考えもなしに電話の受話器を取った。
『はい、もしもし』
すると
『おい、A。その声はAだな。やっぱり家におったんか』
俺は思わず受話器を落とした。
なぜなら電話主が、あの社会科教師であると分かったからだ。
何故ここへ?
理由は詳しく分からないが、俺が目的なのは間違いはない。
俺は今日の授業中のそいつの形相を思い出して震えが再発し出した。
受話器からは怒号が聞こえる、と思ったら急に鳴りやんだ。そして、
『ドンっ』
俺の家の玄関から何かがぶつかる音が聞こえた。
ヤバい。
俺の直感は危険信号を叫び始めた。
なおも玄関から打撃音が聞こえて、心なしか変形を始めている。
大分焦ったがすぐに良案が浮かんだ。
ベランダから祖父母の家に移って祖父母に助けを求めることに決めた俺は、迷わずベランダへ駆け出した。
五階建てのマンションではあるが隣の部屋の間隔が狭い為、比較的楽に乗り移れたが祖父母は未だ帰ってきてはなかった。
万事休すと思ったが、窓が開いていたため、いつ侵入してくるか分からない自宅よりも安全だと判断し、祖父母宅に居座ることに決めた。
ついでに警察に通報して祖父の毛布にくるまって居た。
何分も立たないうちに隣の自宅から打撃音が消えた。
いよいよ怖くなって、部屋の真ん中でくるまって居ると、自宅の窓が気になった。
祖父母宅に移るときにしっかり窓を閉めたか記憶がなかったのだ。
そんなとき不意にベランダから音がした。
見ると社会科教師がしゃがみ込んでいた。
そして、恐らくドアをトンカチとペンチ(後で分かった)を拾い、立ち上がってこっちを見ていた。
笑顔で。
もうだめだと思った瞬間、インターホンが聞こえて、慌てて俺は玄関を開けた。
そこには警察の方々が居てくれてて俺は安心のあまり泣き崩れた。
先生はもうベランダには居なかった。
しかし、家の中に入って行った警察の方々は恐ろしい一言を俺に言い放った。
「ねぇ君、どこにも人は居なかったんだけど」
衝撃が走った。
思わず確認しに行ったが、確かに誰も居ない。
そして俺が驚きにうちひしがれてしているうちに警察の方々は俺のことを無視してどこかへ行ってしまった。
数分後戻ってきて俺にある事実を告げた。
「いま貴方の家に侵入した犯人の死体を発見しました」
あの教師はあのベランダから飛び下りていたのだ。
助かろうとは一欠片も思わずに。
下で警察の方々が見つけたときにはすでに肉塊だったのだ。
後日談だが、あの教師は死ぬつい先日に重度の病で余命を宣告されていたらしい。
それで俺を道連れにしようとしたとか言うのは今ではもう分からなくなってしまった。
今更ながらすまないことをしたと猛省している。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話